豊橋鉄道T1000形電車

豊橋鉄道T1000形電車について

豊橋鉄道T1000形電車（別名「ほっトラム」）は、愛知県の豊橋市で運行される路面電車の形式の一つです。この電車は、アルナ車両によって製造された超低床電車の「リトルダンサー」シリーズに属し、2008年12月から豊橋鉄道の東田本線にて営業運転を開始しました。

導入背景

豊橋鉄道は、渥美線と東田本線という二つの路線を運行する鉄道事業者です。特に東田本線は、市内を走る5.4キロメートルの路面電車ですが、導入以前は2005年に名古屋鉄道から譲り受けた旧型車両を運用していました。その際に導入された部分低床車のモ800形が、今後の超低床車両導入の契機となりました。2005年11月には、地域の関係者による協議が整い、「豊橋路面電車活性化事業計画」が策定されました。

この計画に基づき、豊橋鉄道は2007年度に超低床車の導入を目指し、オリジナルデザインの車両を作るための協議が始まりました。そして、2008年度にこの「T1000形」が納入されることが決定します。導入費用約2億5000万円のうち、国や豊橋市からの補助金及び市民からの寄付で賄われ、豊橋鉄道の負担は1億円未満となりました。

車両の構造

T1000形は、3車体を連結した形状を持つ超低床電車で、両先頭車（A車とB車）と中間車（C車）から構成されています。全ての車体は鋼製で、全長は16.2メートル、車体幅は2.4メートル、高さは3.265メートルです。前面は、曲面形状と大きな三次曲面ガラスを特徴とし、LED式行先表示器も取り付けられています。ドアは計4か所に配置されており、進行方向により乗車と降車の導線が設定されています。

車内はクリーム色を基調にした落ち着いた雰囲気で、スロープによって段差がなく、通路幅は82センチメートル以上の広さを誇ります。座席は両先頭車にクロスシート、中間車にロングシートが配置され、定員は約74名です。特に、進行方向前寄りに設けられた折りたたみ式座席は、車椅子スペースとしても利用可能です。

主要機器

T1000形の台車は2台のみで、中間車は台車を省略したフローティング構造です。主電動機は、車体に直接取り付けられており、電気ブレーキシステムを採用しています。主電動機の出力は85キロワットであり、走行性能にも優れています。屋上には冷房装置や集電装置が備えられており、快適な乗車環境を提供しています。

運行開始と運用状況

豊橋鉄道東田本線において、T1001編成は2008年10月に搬入され、12月19日に営業運転を開始しました。この新たな電車は、83年ぶりに自社発注による車両として、地域の注目を集めました。運行に際しては、特定の急カーブを通過できないため、運動公園への入線は不可となっています。

初年度から鉄道友の会の「ローレル賞」を受賞するなど評価も高く、地域の公共交通機関としての重要性を再確認させる存在となっています。「T1000形」は、豊橋市民にとって生活の一部であり、地域活性化の象徴とも言える存在です。

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