負ケラレマセン勝ツマデハ

坂口安吾『負ケラレマセン勝ツマデハ』：税と闘う作家の姿

坂口安吾の随筆『負ケラレマセン勝ツマデハ』は、1951年に発表された作品です。この作品は、安吾自身が税金滞納によって家財道具や蔵書を差し押さえられた経験をもとに、国税庁との間で繰り広げられた闘いを記録したものです。安吾らしい反骨精神とユーモアに満ちた筆致で、当時の社会や税制に対する痛烈な批判が込められています。

随筆の内容

随筆では、税務署の役人とのやり取りや、差し押さえに至るまでの経緯が詳細に描かれています。安吾は、税務署側の不当なやり方に対して、徹底的に抗議し、自らの正当性を主張します。その姿は、まるで弱者が巨大な権力に立ち向かうかのようです。しかし、単なる不満の表明ではなく、そこには社会の不条理を鋭く見抜く視点と、それを笑い飛ばすユーモアが溢れています。

収録書籍

『負ケラレマセン勝ツマデハ』は、複数の全集や文庫に収録されています。

『定本坂口安吾全集 第8巻 評論 II』（冬樹社、1969年）
解説：奥野健男。解題：関井光男。作家論：松本清張
『坂口安吾全集16』（ちくま文庫、1991年）
解説：中村雄二郎「探偵モラリスト」。解題：関井光男
『坂口安吾全集12』（筑摩書房、1999年）
解題・校異：関井光男。
付録・月報9：赤坂憲雄、立松和平、〔匿名〕、柄谷行人による評論やエッセイを収録。

特に筑摩書房版は、安吾の直筆原稿を翻刻した唯一の版として貴重です。

映画『負ケラレマセン勝ツマデハ』：税金と人生をコミカルに描く

1958年には、この随筆を原作とした映画『負ケラレマセン勝ツマデハ』が公開されました。監督は豊田四郎、主演は森繁久彌です。映画は、原作の持つ社会風刺的な要素を活かしつつ、コメディタッチで描かれています。

ストーリー

舞台は東京の新開地。自動車の幌を取り替える小さな会社を経営する岡見久吉は、税金滞納で税務署から差し押さえを受けます。久吉は、税務署の不当な徴収に怒り、なんとか税金を減らそうと画策します。そんな中、久吉の妻の妹であるお仙は、税務署員の松井と知り合いになり、税法に関する情報を聞き出そうとします。しかし、お仙は松井の真面目な姿に惹かれ、恋心を抱いてしまいます。

税務署との攻防、そして、お仙と松井の恋模様を軸に、物語はコミカルに展開されます。最後には、会社は差し押さえられてしまいますが、久吉は前向きに再出発することを決意します。この映画は、当時の社会状況を背景に、税金という重いテーマをユーモラスに描いています。

キャスト

映画には、個性豊かな俳優たちが多数出演しています。

岡見久吉：森繁久彌
はつ枝（久吉の妻）：望月優子
友川お仙（はつ枝の妹）：淡島千景
松井圭吉（税吏）：小林桂樹

その他にも、伴淳三郎、乙羽信子、有島一郎など、豪華なキャストが作品を盛り上げています。

スタッフ

監督：豊田四郎
原作：坂口安吾
脚本：八住利雄
音楽：芥川也寸志

作品データ

製作：東京映画
公開：1958年1月9日
フォーマット：白黒映画、東宝スコープ

映画の評価

映画は、公開当時から多くの観客に支持され、現在でも高い評価を得ています。特に森繁久彌のコミカルな演技は、多くの人を魅了しました。

まとめ

『負ケラレマセン勝ツマデハ』は、坂口安吾の反骨精神とユーモアが詰まった作品です。随筆と映画、それぞれのメディアで、税金という重いテーマを扱いながらも、人々を惹きつける魅力があります。現代においても、そのメッセージは色褪せることなく、私たちに様々な問いを投げかけています。

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