貴方だけを愛して (アルバム)

アレサ・フランクリンの『貴方だけを愛して』

アメリカの歌手アレサ・フランクリンが1967年に発表したアルバム『貴方だけを愛して』（原題：I Never Loved a Man the Way I Love You）は、彼女のキャリアにおける重要なマイルストーンです。このアルバムは、アトランティック・レコードへの移籍後、彼女がリリースした第1弾のスタジオアルバムであり、フランクリンの音楽スタイルに革新をもたらしました。

背景

アトランティック・レコードの重役、ジェリー・ウェクスラーは、フィラデルフィアのDJであるルイーズ・ビショップから、フランクリンがコロムビア・レコードとの契約を終了したことを知らされます。これを受け、ウェクスラーは彼女と当時の夫であるテッド・ホワイトに連絡し、契約を結ぶこととなります。1967年1月24日、フランクリンはアラバマ州のマッスルショールズにあるフェイム・スタジオで、「貴方だけを愛して」と「恋のおしえ」の録音を行いました。これらの曲は、アルバムのリリースに先駆けシングルとしても発表されました。

その後、2月にはアトランティック・レコードのスタジオで残りの曲がレコーディングされ、フランクリンの音楽に多大な影響を与えたキング・カーティスも参加しています。レコーディングには、トム・ダウドとアリフ・マーディンという二人のエンジニアが関わり、彼らの才能が作品に色を添えました。特にフランクリンは多くのトラックで自らピアノを演奏し、その自由なスタイルが作品の構想における重要な要素となりました。

アルバムは1967年3月に発表され、4月にはオーティス・レディングの名曲「リスペクト」がシングルとしてリリースされました。この曲は後にフランクリンのシグネチャーソングとなるのです。

反響と評価

『貴方だけを愛して』は、アレサ・フランクリンにとって初めてBillboard 200でトップ40入りを達成し、最高で2位を記録しました。また、ビルボードのR&Bアルバム・チャートでも1位を獲得し、彼女のキャリアにおける成功を十分に示しました。「リスペクト」はフランクリンにとって初の全米No.1に輝き、彼女はこの曲でグラミー賞の最優秀R&Bレコーディング賞と最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス賞を受賞しました。

このアルバムは、2001年にVH1が選抜した「100 Greatest Albums」において30位にランクインし、2003年には『ローリング・ストーン』誌の選ぶオールタイム・グレイテスト・アルバム500で83位に選ばれました。2020年の改訂版では、その順位が大きく上昇し、13位にランクされています。

収録曲

アルバムには以下の曲が収められており、それぞれのトラックがフランクリンの実力を証明するものとなっています。

• - リスペクト - "Respect" (Otis Redding) - 2:26
• - 涙に濡れて - "Drown in My Own Tears" (Henry Glover) - 4:00
• - 貴方だけを愛して - "I Never Loved a Man (The Way I Love You)" (Ronny Shannon) - 2:47
• - ソウル・セレナーデ - "Soul Serenade" (Curtis Ousley, Luther Dixon) - 2:30
• - 夢をさまさないで - "Don't Let Me Lose This Dream" (Aretha Franklin, Ted White) - 2:22
• - ベイビー・ベイビー・ベイビー - "Baby, Baby, Baby" (A. Franklin, Carolyn Franklin) - 2:48
• - ドクター・フィールグッド - "Dr. Feelgood (Love Is a Serious Business)" (A. Franklin, T. White) - 3:18
• - グッド・タイムズ - "Good Times" (Sam Cooke) - 2:05
• - 恋のおしえ - "Do Right Woman - Do Right Man" (Dan Penn, Chips Moman) - 3:15
• - セイヴ・ミー - "Save Me" (C. Ousley, A. Franklin, C. Franklin) - 2:20
• - ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム - "A Change Is Gonna Come" (S. Cooke) - 4:15

参加ミュージシャン

アレサ・フランクリンの音楽に参加した名だたるミュージシャンたちも紹介しておきましょう。フランクリン自身がボーカルとピアノを担当し、スプーナー・オールダムやジミー・ジョンソン、キング・カーティスなど、数多くの才能ある音楽家が参加しています。

このアルバムは、アレサ・フランクリンの個性と音楽的なビジョンを見事に表現した作品であり、今なお多くのリスナーに愛され続けています。

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