賀陽治憲

賀陽治憲：旧皇族から外交官へ

賀陽治憲（かや はるのり）は、1926年（大正15年）に旧皇族である賀陽宮恒憲王の第二王子として誕生しました。幼少期は治憲王と呼ばれ、学習院で教育を受け、その後海軍兵学校に進みました。しかし、第二次世界大戦後の皇籍離脱により、一人の日本人「賀陽治憲」として新たな人生を歩み始めます。

海軍兵学校時代

1943年（昭和18年）に海軍兵学校に入学した賀陽治憲は、同期生と共に厳しい訓練を受けました。当時、皇族という特別な身分であったため、入校式では同期生から敬礼を受ける場面もあったそうです。分校では柔道に励み、心身を鍛えました。しかし、1945年（昭和20年）の終戦により、海軍兵学校を卒業したものの、少尉候補生という階級で軍人のキャリアを終えることとなりました。

外交官としてのキャリア

戦後、皇籍を離脱した賀陽治憲は、東京大学法学部を卒業後、外務省に入省します。その後は、国際連合日本[[政府代表部]]、在アメリカ合衆国日本国大使館など、様々なポストを歴任しました。欧亜局英連邦課長、日本政府沖縄事務所次長、ジュネーブ国際機関日本政府代表部公使、外務省経済局次長、領事移住部長などを経て、1979年（昭和54年）から1981年（昭和56年）には国連局長を務めました。その後も、在イスラエル特命全権大使、在デンマーク特命全権大使、そしてブラジル特命全権大使を歴任し、外交官として国際舞台で活躍しました。

国際連合での活動と人権問題

国連局長時代には、国会の政府委員として、国際連合の人権条約の批准に関して答弁を行いました。しかし、その中には奴隷制度廃止補足条約など、人権条約に対して消極的な答弁も含まれていたため、当時の国際社会における日本の立場がうかがえます。

晩年と評価

外務省を退官後も、財団法人交流協会顧問、学習院の同窓会である桜友会の会長などを務めました。侍従長であった入江相政は、日記の中で賀陽治憲を「皇族、旧皇族のうちのまさにピカ一」と評し、その人物像を高く評価しています。晩年は、2011年（平成23年）に老衰のため逝去されましたが、その生涯は皇族としての出自と、外交官としての実績、そして激動の時代を生き抜いた人物として、多くの人々に語り継がれています。叙・従三位。

発言と栄典

賀陽治憲は、1947年（昭和22年）に太宰治の小説『斜陽』について、「ちょっと身につまされておもしろいですね」と発言しており、当時の世相に対する関心がうかがえます。また、1996年（平成8年）には勲二等旭日重光章を受章しています。

血縁関係と系譜

賀陽治憲の父は賀陽宮恒憲王、母は恒憲王妃敏子であり、兄弟には邦寿王、美智子女王、章憲王、文憲王、宗憲王、健憲王がいます。妻は松田朝子で、松田正之（男爵）の娘にあたります。この系譜からも、旧皇族という特別な出自を持つ人物であったことがわかります。

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