資本の本源的蓄積

資本の本源的蓄積

資本の本源的蓄積とは、封建制度から資本主義社会へ移行する際の経済的変化を説明する概念です。これは、商品生産が成立するために必要な基盤を形成する過程でもあります。この過程には、生産手段を手に入れ、労働力から剰余価値を得る資本家と、自己の労働力を販売することができる労働者、いわゆるプロレタリアートの存在が不可欠です。この二つの階級は、封建体制の崩壊によって初めて出現するのです。

典型的な例として、18世紀のイギリスでは、ヨーマン（小農）が土地を失い、囲い込みによる農地の集約化が進み、彼らの多くが賃労働者になりました。これにより、資本主義的な生産の基礎が確立されたのです。さらに、その後の産業革命はこの過程を一段と加速させました。

マルクスとエンゲルスは、資本の蓄積過程の理解において重要な役割を果たしました。特にエンゲルスは、『資本論』第3版の「あとがき」で、本源的蓄積に関する草稿の様子を述べながら、マルクスの議論を補完しました。彼は、資本主義的生産が生まれる前に存在していた「本源的」蓄積の必要性を強調し、この蓄積が単なる経済的プロセスではなく、歴史的な背景に由来するものであることを示しました。

見田石介は、マルクスが本源的蓄積についてどのように解決策を提示したのかを考察し、その方法論的意義を解説しています。ここでは、資本主義的生産過程の結果ではない未来の資本家と労働者の存在を明らかにすることが、その理解につながることを示しました。

また、マルクスは、第24章での本源的蓄積の秘密について次のように述べています。この章では、貨幣がどのように資本へと変わり、そこからどのように剰余価値が生まれるのかを前提とした議論を展開しています。

資本の蓄積は剰余価値を前提とし、剰余価値は資本主義的生産が基盤となります。しかし、資本主義的生産そのものは、適切な量の資産と労働力が貨幣所有者の手に存在することを要します。このため、資本の動きは一見「循環論法」のように思えることもありますが、この文脈から抜け出すためには、資本主義的蓄積の前に存在する本源的蓄積を認識しなければなりません。

本源的蓄積は、商品生産者の手元に大きな資本や労働力が集まる前の段階にあたります。マルクスはこの点を強調し、ただ単に資本の累積を考えるのではなく、その発端となる歴史的経緯を重視しました。

このように、資本の本源的蓄積は、単なる経済的変化にとどまらず、社会全体の構造的変革をも含む深い意味を持っています。封建社会が崩壊することによって新たな社会的関係が生まれ、それがさらなる資本主義の発展を促進したのです。このプロセスは、歴史を通じて何度も繰り返される古い構成体の崩壊と新しい生産様式の誕生を織り交ぜながら、進展しています。

関連項目

• - 農業革命
• - 資本蓄積

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