贛江

贛江（かんこう）について

贛江（かんこう、拼音: gàn jiāng）は、中華人民共和国を流れる川の一つで、鄱陽湖に流入する長江の右岸支流です。江西省を南北に貫く江西省最大の川であり、江西省の別名である「贛」（かん）はこの川に由来します。本流の長さは751km、支流の源流まで合わせた長さは991kmです。

名の由来

贛江は、古代には「灨」または「淦」とも書かれました。秦代以前には「楊漢」、漢代には「湖漢」と呼ばれていました。「贛水」という名の初出は「山海経」の巻十三「海内東経」にあり、「贛水は聶都山より出て、東北に流れ、彭澤の西に入る」と記されています。

贛江という名の由来には諸説ありますが、主要なものとして「章貢合流説」と「贛巨人説」があります。

章貢合流説

最も一般的に流布している説は、江西省南部の山地を流れる「章水」と「貢水」という二つの川が贛州市（章貢区）で合流し、贛江となるというものです。このため、左に章の字、右に貢の字を組み合わせて「贑」の字が生まれ、それが転じて「贛」になったとされます。しかし、「贛」の字は秦代以前に出現しているのに対し、「贑」の字は唐代以後にしか出現していないという問題点があります。

贛巨人説

贛巨人（かんきょじん）とは、古代中国の言い伝えで南方に住むとされていた巨人です。「山海経」の中の「海内経」に初出し、「南方には贛巨人があり、人面をし腕が長く、体は黒くて毛が生え、かかとは反り返っている」とあります。晋代の郭璞による「山海経」への注では、「今の交州・南康郡（江西省南部周辺）には、深い山中にはこのようなものが住んでいる。…南康には現在は贛水があり、この人たちが住んでいることからこの川の名がついた」とされています。

地理

贛江は、贛州市章貢区で二つの支流、すなわち東の貢水と西の章水が合流して生まれます。

貢水

贛江の東の水源は、石城県の武夷山・黄竹嶺です。最初は綿水と呼ばれ、瑞金市を流れます。会昌県で湘水と合流して貢水という名になり、于都県、贛県区、章貢区へと流れます。この川の水源が贛江の水源地とされています。

章水

西の源流である章水は、崇義県の聶都山・張柴洞を水源とします。大余県、上猶県、南康区、贛県区、章貢区と流れ、章貢区の八境台で貢水と合流し、ここから贛江と呼ばれるようになります。

贛江本流

章貢区で合流した贛江は、曲がりくねりながら北へ流れ、万安県、泰和県、吉安県、吉州区、青原区、吉水県、峡江県、新幹県、樟樹市、豊城市を経て、南昌市の新建区、南昌県に入り、四つに分流して鄱陽湖に流入します。

流域

贛州市までが上流で、山地の中を縦横に走り、支流は非常に多いです。主要な支流には湘水、濂江、梅江、平江、桃江、上猶江などがあり、章水または貢水に合流しています。

贛州市から新幹県までが中流です。贛州市から万安県までの区間では、川が遂川・上猶山地を貫いて流れているため峡谷と急流が多かったですが、万安水力発電所のダム建設で急流のほとんどは水没しました。万安県から下流では、川は吉泰盆地に入り、川幅は広く流れも緩やかになります。中流での支流には孤江、遂川江、蜀水、禾水、瀘水河など比較的大きな川があり、水量もここで増大します。吉水県から新幹県までの区間は武功山脈の支脈を貫くため、長い峡谷になっています。

新幹県から先は下流で、山は後ろへ退き大きな平野となり、川面も幅広くなり流れも非常に緩やかです。袁水および綿河がこの区間での主な支流です。

気候・流量

贛江流域の気候は温和で雨量は十分にあり、年平均降水量は1,400mmから1,800mmに達します。贛江の年平均流量は687億立方mで、黄河よりも多いです。ただし一年間の雨量分布は均等ではないため水量の少ない時期もあり、また川床は浅いため、水運は中流・下流にほぼ限られます。万安ダム建設後は水量不足も改善され、本流では一年を通して100トンから300トンの貨物船や客船が航行できます。万安水力発電所は最大出力360万KWで、現在江西最大の発電所です。

江西省と広東省を隔てる南嶺山脈のうち、贛江（章水）の上流部には大庾嶺（梅嶺）という山脈があります。この山脈を超える「梅関古道」は、章水沿いの大余県から北江（珠江上流）沿いの南雄市へと超える山道で、秦代から1936年の粤漢鉄道開通までの間、中国北方から嶺南地方へと南下する主要な街道でした。

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