赤司欽一

赤司欽一

赤司 欽一（あかし きんいち、1841年6月23日（天保12年5月5日） - 1910年（明治43年）5月30日）は、幕末から明治にかけて活躍した日本の武士（佐賀藩士）、裁判官、検察官、官僚です。佐賀藩士の家に生まれ、幼名は敬信、通称を欽一と称しました。

生涯

肥前国三根郡前年田村（現在の佐賀県みやき町）で、佐賀藩士の家に生を受けました。明治維新後の1872年（明治5年）6月12日、新政府に出仕し、工部省工学中属兼測量中令史に任官しました。その後、工学権大属、兼測量大令史、工部少書記官などを歴任し、工部省において技術官僚としてのキャリアを積みました。

1882年（明治15年）8月には、司法の道に進み、判事に転じて東京始審裁判所予審掛となります。同年12月には、福島事件の被疑者処理のため、若松軽罪裁判所に派遣されました。この際、わずか三ヶ月ほどの間に数百人もの被疑者を処理するという異例の事態となりました。具体的には、農民500余人を罰金刑、自由党員25人を懲役刑（1～5年）としたほか、河野広中ら57人を国事犯・兇徒聚衆罪の容疑で高等法院に護送、その他を釈放しました。しかし、この際の審理は十分とは言えず、上告した被告人のほとんどが無罪となる結果となりました。

福島事件の処理後、前任の三島通庸県令からの強い推薦を受け、1884年（明治17年）11月、福島県令に就任しました。しかし、行政経験が浅かったこと、県庁の郡山町移転問題への対応のまずさ、在任中の滞京が長く福島での滞在が短いことなどから、県民の不満が高まり、1886年（明治19年）7月に県令を非職となりました。福島県令としての在任期間は短く、県政において十分な実績を残すことはできませんでした。

1887年（明治20年）2月には、検事として再び司法の現場に戻り、大審院刑事第二局検察官に就任しました。その後、浦和地方裁判所検事正を務め、検察官としてのキャリアを重ねました。

栄典

1885年（明治18年）2月6日 - 従五位
1890年（明治23年）12月26日 - 勲五等瑞宝章

親族

長男：赤司鷹一郎（文部次官）

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
大植四郎編『明治過去帳』新訂初版、東京美術、1971年（原著私家版1935年）。
* 高橋哲夫『ふくしま知事列伝』福島民友社、1988年。

赤司欽一は、技術官僚としてキャリアをスタートさせ、その後、司法の世界で判事、検察官として活躍し、さらに福島県令を務めたという多岐にわたる経歴を持っています。福島県令としては不本意な結果に終わりましたが、その後の司法の世界での活躍は、彼の能力の高さを物語っています。彼の生涯は、明治維新という激動の時代を生き抜いた官僚の一つの典型を示すものと言えるでしょう。

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