赤祖父溜池

赤祖父溜池（あかそぶためいけ）

富山県南砺市川上中（かわかみなか）に位置する赤祖父溜池は、豊かな自然に囲まれた美しい溜池です。総貯水容量、有効貯水容量ともに76万立方メートルを誇り、2010年（平成22年）には農林水産省のため池百選に選定されました。

概要

赤祖父溜池は、砺波平野の南東部に位置し、一級河川小矢部川水系の山田川支流である赤祖父川と干谷川によって形成された扇状地に広がる400ヘクタールの水田を潤しています。周辺地域には、日本の原風景とも言える美しい散居村が点在しています。

溜池の背後には、標高約1000m級の赤祖父山がそびえ立ち、山麓にはブナの原生林が広がっています。このブナ林は水源涵養保安林として保護されており、1995年（平成7年）には林野庁の水源の森百選にも選ばれました。豊かな森が、溜池の水源を育んでいます。

歴史

この地域は過去に度重なる旱魃に見舞われ、水争いが絶えませんでした。1926年（大正15年）の大旱魃を契機に、赤祖父川に堰堤を築く計画が持ち上がり、1932年（昭和7年）9月に「県営赤祖父郷用水補給事業ため池築造工事」が着工されました。

しかし、第二次世界大戦の影響で労働力が不足し、工事は難航。延べ13万5千人もの人々が動員され、特に堤体の固め作業には7,800人の女性が参加しました。13年の歳月を経て、1945年（昭和20年）6月にようやく完成。1997年（平成9年）から2000年（平成12年）にかけて改修工事が行われ、現在に至っています。

赤祖父円筒分水

1949年（昭和24年）には、地区ごとに一定水量を分けるための円筒分水槽が完成しました。これは、遠藤清之輔の設計によるもので、富山県内最古の円筒分水槽です。鉄筋コンクリート造りで、直径3.4m、面積29平方メートルと県内では最小規模ですが、その機能は非常に重要です。

庄川上流用水土地改良区が所有し、3つの用水に水を分配することで、灌漑に応じた用水配分が可能になり、長年の水争いが解消されました。また、農業用水だけでなく、防火用水や融雪のための生活用水、地域環境保全用水としても利用されています。2020年（令和2年）4月3日には、国の登録有形文化財に登録されました。

自然

赤祖父溜池は、豊かな自然環境に恵まれており、ヘラブナ、コイ、マブナ、ワカサギ、モロコなどの魚類をはじめ、様々な野鳥やニホンカモシカ、ノウサギ、タヌキなどの動物が生息しています。また、トンボ、ホタル、カエルなど、多くの在来生物の生息地にもなっています。

親水

毎年、「ふれあいヘラブナ釣り大会」や「つばきの郷赤祖父夏祭り」などのイベントが開催され、地域住民や観光客で賑わいます。周辺には、パットゴルフ場、芝生広場、バーベキュー広場、遊歩道などが整備されており、赤祖父溜池は、農業用水を貯める機能だけでなく、地域の人々の憩いの場としての役割も担っています。

アクセス

道路

富山県道284号井波井口城端線
富山県道294号川上中北野線

公共交通機関

JR城端線城端駅から約4.5km
JR城端線福野駅より南砺市営バス（なんバス）福野・井波・井口循環線左回りまたは右回りに乗車、「ゆ～ゆうランド花椿」停留所下車
* 城端駅より南砺市営バス（なんバス）城端東回り線に乗車、「ゆ～ゆうランド花椿」停留所下車

赤祖父溜池は、豊かな自然と人々の営みが調和した、貴重な場所です。ぜひ一度、訪れてみてください。

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