赤羽台団地

かつて東京都北区赤羽台に位置していた赤羽台団地は、日本住宅公団（現：都市再生機構）によって整備された大規模な集合住宅群です。施設の老朽化に伴い、現在は順次建て替えが進められ、「ヌーヴェル赤羽台」として新たな姿を見せていますが、一部の建物は文化財として保存されています。

団地開発の背景と計画

赤羽駅西口から歩いて約10分の高台に広がる団地の敷地は、その歴史を辿ると、戦前は旧日本陸軍の被服本廠があり、戦後は米軍の東京兵器補給廠第3地区として利用されていました。1958年（昭和33年）に日本へ返還された後、設立から間もない日本住宅公団に払い下げられ、団地開発の舞台となります。

ここで計画されたのは、都内23区では初となる、およそ3,373戸にも及ぶ大規模かつ高密度の集合住宅団地でした。当時の国や東京都からは、将来的な都市居住のモデルとなるような、先進的な団地空間を創造することが期待されており、公団側も設立5周年を前にした組織の集大成として、これまでにない新しい都市型団地の実現に強い意欲を持っていました。

特徴的な空間デザインと施設

団地の配置計画は、旧軍用地時代に大型車両が通行していた堅牢な既存道路の活用や、駅から北側の都営桐ヶ丘団地へと続く団地内道路を地下化するといった条件が大きな影響を与えました。これらの制約から団地の区画が定められ、多くの住棟は一般的な南向きではなく、南西約45度振れた配置となりました。このため、主に平行に並べられた住棟の間に、意図的に直交する棟を配することで、視覚的なアクセントを生み出し、空間にまとまりを持たせています。特に、駅に近い不整形なエリアには、特徴的な星型（スターハウス）のポイントハウスを複数棟配置し、団地の玄関口としての景観を印象づけました。団地の中央北側には、モデル的な囲み型住棟が配置され、その足元には商店街や集会所といった利便施設が集まっていました。さらに、団地内には中学校が1校、小学校が東西に2校、郵便局や消防署なども整備され、団地内で日常生活が完結できるような都市機能が備わっていました。入居開始は1962年（昭和37年）ですが、公団は入居に先立ち、火災実験を行うなど、安全性にも配慮していました。

多様性を取り入れた住戸プラン

赤羽台団地は「都市型団地」として計画されたため、従来の核家族のみを想定した画一的な間取りではなく、都市生活を送る多様な居住者に対応するための様々な住戸プランが試みられました。標準設計にとらわれず、単身者向けの1Kタイプから大家族向けの4DKタイプまで、大小幅広い間取りが用意されました。中には専用庭が付いた住戸や、将来的な家族構成の変化に合わせて3戸を2戸に改造することが可能なユニークな設計の住戸も存在しました。こうした多様な住戸プランは、当時の公団が都市における新たな住宅モデルを模索した成果と言えます。千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館の第六展示室「現代」では、赤羽台団地のダイニングキッチンが再現展示されており、当時の暮らしぶりを垣間見ることができます。

建て替えと文化財としての継承

住棟の老朽化が進んだことから、2000年（平成12年）以降、団地は段階的に「ヌーヴェル赤羽台」への建て替えが進められました。従前からお住まいだった方の新しい住居への戻り入居は、2018年（平成30年）10月末をもって完了しています。

建て替えが進む一方で、団地の歴史的価値が見直される動きも生まれました。2018年には日本建築学会からUR（旧公団）に対し、既存住棟の保存活用に関する要望書が提出され、団地の設計思想や該当住棟の歴史的意義が改めて認識されました。その結果、特徴的な板状住棟1棟（41号棟）と、シンボル的存在であったスターハウス3棟（42～44号棟）の計4棟が保存活用されることになりました。これらの4棟は、2019年12月5日、集合住宅団地の建物としては全国で初めて、国の登録有形文化財に登録されました（登録名称は「旧赤羽台団地41〜44号棟」）。URでは、この登録を機に、保存される住棟の一部に新築部分を加えて、「都市の暮らしの歴史を学び、未来を志向する情報発信施設」として整備・活用していく計画を進めています（令和4年度開館予定でした）。

文化的なつながり

赤羽台団地は、その特徴的な景観から様々な作品に登場しています。1964年の東宝映画『団地七つの大罪』では、全編にわたって団地が舞台となりました。また、赤羽台団地で少年時代を過ごしたエレファントカシマシのリーダー、宮本浩次さんの縁から、同バンドの楽曲「桜の花、舞い上がる道を」のミュージックビデオが団地内で撮影されています。このつながりは、赤羽駅の発車メロディに2018年からエレファントカシマシの楽曲が採用されるきっかけの一つともなりました。

アクセス

JR埼京線ほか赤羽駅より徒歩約10分。

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