越絶書

『越絶書』について

『越絶書』は、春秋戦国時代の呉と越に関する詳細な記録をまとめた書物で、後漢の初期に成り立ちました。現在手元にある版は15巻から構成されています。この作品は、同じ時代を扱った『呉越春秋』と内容に重複がありつつも、成立した年代は『越絶書』の方が早く、また『呉越春秋』には『越絶書』を元にした部分が多く見られます。

成立の背景

『越絶書』は、著者が子貢であるとする説が『隋書』の経籍志に記載されています。ただし、外伝の本事篇では、作者について「呉越の賢者」とのみ記され、子貢や伍子胥が著者であるとする異なる説も存在しています。実は、作品の最終篇に含まれる謎めいた記述が、真の著者に関する手がかりを示唆していると言われています。明の時代の楊慎は、この文が会稽の袁康と呉平によって記されたことを意味し、同時に『越紐録』が『越絶書』と同一視されることについても考察しています。しかし、余嘉錫はこの作品は戦国時代に存在した伝承を体系化したものであり、中身が多岐にわたることから、その見解に賛同する見方もあります。

外伝記の呉地伝の部分では、漢が秦と統一してから242年、勾践が瑯琊に遷都してから建武28年までが567年と記されているが、この数値には誤りがあり、成立年代としては建武28年（西暦52年）前後であることが分かっています。

書物の構成

現存する『越絶書』は15巻19篇で構成されており、内経、内伝、外伝、外伝記の区別がなされています。内容は多様性に富み、古くは内紀が8篇、外伝が17篇の計25篇が存在したと言われています。物語の質から見ても、非常に興味深い内容が盛り込まれています。

内容の概要

一部を抜粋して紹介します。

1. 越絶外伝・本事第一 - 主に呉と越の主要な出来事を叙述します。
2. 越絶荊平王内伝第二 - 伍子胥の逃亡と闔廬との関係を描きつつ、楚との戦いに至るまでの様子を記録しています。
3. 越絶外伝記・呉地伝第三 - 呉の地理や歴史に関する情報を提供します。
4. 越絶呉内伝第四 - 伍子胥と范蠡が戦略を練る様子が描かれていますが、難解な部分もあります。
5. 越絶計倪内経第五 - 勾践に富国のための方策が授けられる内容です。
6. 越絶請糴内伝第六 - 大夫種によって越が呉の穀物を購入するエピソードです。これは後に呉王が自殺することに繋がる運命の話です。
7. 越絶外伝記・地伝第十 - 禹から秦末までの越の歴史が簡潔に記されています。
8. 越絶外伝・春申君第十七 - 李環の計略による春申君との関係についての記録です。

文献中には、呉内伝に関連する越語に関する記述も見られ、歴史的背景や異文化について詳しい理解を得られます。

翻訳と参考文献

この古典的な文献の英語訳はOlivia Milburnによって行われ、『The glory of Yue』として出版されました。これに加えて、佐藤武敏訳の『呉越春秋』も参考にされることが多く、呉と越にまつわる興味深い歴史物語が展開されています。『越絶書』は、その時代の多くの知識や感情を伝える貴重な資料であるといえるでしょう。

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