楊慎

楊慎（よう しん）

楊慎は、明代中期に活躍した文人であり、字を用修、号を升庵と称しました。博南山人や博南戍史といった別号も持ち、諡号は文憲です。彼の生涯は、卓越した才能と政治的な不遇が交錯するものでした。

生涯

楊慎は、1488年に成都府新都県で生まれました。先祖は吉安府廬陵県に本貫を持ちます。父は少師大学士を務めた楊廷和であり、幼少期から恵まれた環境で育ちました。4歳の時には、母から唐代の詩を教えられ、すぐに暗誦したという逸話が残っています。

12歳の時、祖母の訃報を受けて父と共に蜀へ赴き、その地で父から『易経』を学びました。この時、「古戦場文」という一文を著し、中でも「青楼は紅粉の魂を断ち、白日は翠苔の骨を照らす」という一節は、人々を魅了し、広く愛唱されたと伝えられています。

弘治14年（1501年）、渭城を通り過ぎた際に「送別の詩」と「霜葉詩」を作りました。さらに、「万葉詩」が詩人として名高い李東陽の目に留まり、彼の門下に入ることになります。正徳2年（1507年）には、四川の郷試で抜群の成績を収めて選抜され、祭酒・玉類からは「いずれ天下の士となるだろう」と高く評価されました。

正徳6年（1511年）、会試で第2位、殿試では24歳という若さで首席（状元）に輝き、翰林修撰に任じられます。正徳9年（1514年）には経筵展書官となり、「文献通考」の校訂に携わりました。当時の皇帝であった武宗正徳帝が、軍事訓練を名目に各地を巡り遊蕩に耽るのを憂い、たびたび諫言しましたが、聞き入れられることはありませんでした。

世宗嘉靖帝が即位すると、経筵の講官となり、「尚書」を進講しました。嘉靖2年（1523年）には、「武宗実録」の編纂に携わります。しかし、嘉靖3年（1524年）、父の楊廷和が大礼の議問題で内閣大学士を辞任すると、桂萼や張璁らが重用されたことに強く反対し、皇帝に再三訴えましたが、そのために平民に落とされ、雲州永昌衛への流刑を宣告されました。嘉靖38年（1559年）に、72歳でその生涯を閉じたとされています。

楊慎は、生涯を通じて百余種、約3000巻にも及ぶ著作を遺しました。彼の作品は、その博識と文才を示すものであり、後世に大きな影響を与えています。

著作

『滇程記』
『丹鉛総録』
『古音猟要』
『全蜀藝文志』
『春秋地名考』
『升庵詩話』
『升庵集』

著名な作品

参考文献

『明史』巻192

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