趙佗

趙佗（ちょう だ）

趙佗は、秦代の官僚であり、後に南越の初代王となった人物です。漢人でありながら、南方の地で独立国家を築き上げ、その生涯は波乱に満ちたものでした。

生涯

青年期

趙佗は、常山郡真定県（現在の河北省石家荘市正定県）の出身です。秦の始皇帝が天下統一を成し遂げた後、趙佗は屠睢と任囂の部下として、南海郡（現在の広東省）の統治に携わりました。彼らの任務は、百越と呼ばれる南方の蛮族を鎮圧し、漢族の移住を促進することでした。しかし、鎮圧中に屠睢が越人に殺害されるという事件が起こります。

程なくして任囂も病に倒れ、信頼していた趙佗に後事を託します。「ここは秦から独立するのに適した地域だ。君ならできるだろう」という任囂の遺言を受け、趙佗は南海郡尉代行として、広東周辺で厳格な法律を敷き、朝廷から派遣された高官の不正を摘発するなど、着々と独立の準備を進めていきました。

王と称する

紀元前206年、秦が項羽によって滅ぼされると、趙佗は任囂の遺志に従い、軍勢を率いて桂林郡・象郡を併呑しました。そして紀元前203年、国号を「南越」と定め、自ら武王と称しました。紀元前202年に劉邦が項羽を討ち、前漢を興しますが、国内の疲弊を考慮し、南越への遠征は見送られました。

紀元前196年、劉邦は陸賈を和睦の使節として派遣します。趙佗は陸賈を迎え入れ、南越王として正式に認められました。国境を長沙国とすることで合意し、趙佗は陸賈に宝玉を送りました。

しかし、呂后の時代になると、漢朝は鉄製器具の交易を禁止します。趙佗はこれを長沙王の陰謀と疑い、武帝を自称して長沙国を攻撃し、略奪を行いました。呂后は周竈に南越遠征を命じますが、疫病のために撤退を余儀なくされます。

強国南越

この機に乗じて、趙佗は閩越・甌越方面へ勢力を拡大し、華南全域と華中南部の一部を南越の領土としました。そして、帝と称して「南越国の武帝」と号しました。

紀元前179年、前漢では文帝が即位し、趙佗の一族を懐柔する政策を取りました。陸賈を再び使節として派遣し、趙佗は「藩王」として漢に貢物を送るようになります。しかし、南越国内では依然として「武帝」と称していました。

建元4年（紀元前137年）、趙佗は百余歳（『大越史記全書』では121歳）で亡くなりました。後を継いだのは、嫡孫の趙眜でした。

子孫

趙佗の息子には趙始（趙仲始）がおり、孫には趙眜（趙胡）がいます。曾孫には趙嬰斉（明王）、玄孫には趙興（哀王）、趙越、趙次公、そして最後の王である趙建徳がいます。また、趙佗の族孫には蒼梧郡の秦王・趙光がいました。趙佗の六世孫である趙建徳は、前漢の武帝によって滅ぼされました。

趙佗は漢人の出自でありながら、南越を独立国家として築き上げ、その子孫もまた南越の発展に貢献しました。趙佗の一族は、連れてきた秦の兵士の子孫とともに、やがて南越に同化していきました。

宗族

子
趙始
孫
文王 趙眜（文帝）

脚注

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