閩越

閩越（びんえつ）とは

閩越は、現在の中国福建省にかつて存在した政権です。紀元前306年から紀元前110年頃まで存続し、特に紀元前202年前後の半世紀は国力が充実し、当時の中国東南部で最大の勢力となりました。閩越王騶無諸（すうぶしょ）が築いた王城は、地域最大の都市として繁栄しました。

成立の背景

閩越の成立には、越の滅亡が深く関わっています。春秋時代後期から戦国時代にかけて、越は勾践（こうせん）によって一時復興しましたが、紀元前306年に無彊（むきょう）が楚との戦いで敗死し、越は滅亡しました。越の王族や人々は海路で閩中に逃れ、現地の百越族と融合し、閩越を建国するに至りました。

秦の侵攻とその後

紀元前221年、秦が中国を統一すると、閩中にも軍を派遣し、閩中郡を設置しました。しかし、秦にとって閩中は辺境の地であり、統治は容易ではありませんでした。そのため、秦は形式的に郡を設置したものの、閩越王の地位を廃止せず、従来の統治を認めました。一方で、秦は越人を現在の浙江省北部や安徽省、江西省へ移住させ、中原の文化を浸透させようとしました。

紀元前209年、陳勝・呉広の乱が発生すると、閩越王騶無諸は兵を率いて中原の農民反乱に加勢し、秦朝に打撃を与えました。秦滅亡後、楚漢戦争が始まると、騶無諸は劉邦を支援し、漢朝の創建に貢献しました。紀元前202年、漢朝は騶無諸の功績を認め、閩越王に封じ、閩中の統治を認めました。騶無諸は王城を再建し、東南一帯の最大勢力として君臨しました。

閩越王城

閩越王城は、面積約48万平方メートル、4つの城門を持つ巨大な都市でした。東西の城門を結ぶ大通りは丸石で舗装され、幅10メートルに及びました。通りの北側には、2万平方メートルの宮殿区が設けられ、政治の中心となっていました。当時の閩越は、百越文化の風俗習慣、宗教、文化、芸術を維持しながら、華夏文化の影響も受け、独自の文化を築き上げました。

衰退と滅亡

騶無諸の死後、後継者争いが起こり、国内は混乱しました。それでも、北方の東甌や南方の南越を攻略し、勢力を拡大しました。閩越王騶余善（すうよぜん）の時代には、皇帝を自称し、漢に反旗を翻しました。しかし、当時の漢は武帝の治世下で国力が充実しており、武帝は匈奴を平定後、数十万の兵を閩越に派遣しました。紀元前110年、武帝は大軍をもって閩越を制圧し、住民を内地へ強制移住させ、ここに閩越は滅亡しました。

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