趙爾豊

趙爾豊（ちょう じほう）

趙爾豊は、清朝末期の激動期に活躍した政治家です。字は季和といい、奉天府鉄嶺県（現在の遼寧省鉄嶺市）の出身で、漢軍正藍旗に属していました。兄の趙爾巽もまた、清末民初の政治家として知られています。

初期の経歴と錫良との出会い

1875年、趙爾豊は郷試を受験しましたが、合格には至りませんでした。その後、謄録（浄書係）として官吏の道を歩み始めます。山西省での勤務を経て、1888年に転機が訪れます。当時、山西省に赴任していた錫良（シリャン）に見出され、その能力を高く評価されたのです。これを機に、趙爾豊は錫良の引き立てを受け、様々な役職を歴任していくことになります。

1901年、錫良が河道総督に就任すると、趙爾豊はその下で河川工事の責任者として手腕を発揮しました。この時期の経験が、後の彼の活躍を支える基盤となったと言えるでしょう。

四川省での活躍と昇進

1903年、錫良が四川総督に任命されると、趙爾豊もこれに従って四川省入りします。現地では、会党や土司による反乱の鎮圧に尽力し、その功績を認められていきます。1906年には、清朝から督弁川滇辺務大臣に任命され、四川省と雲南省の辺境地域における行政を統括する立場となりました。

1907年、趙爾豊は錫良の後任として護理四川総督に任じられ、四川省のトップに躍り出ます。さらに、1908年には駐蔵大臣兼領辺務大臣に任命され、チベットとの関係も担当することになりました。その後、正式に四川総督に就任し、名実ともに四川省の最高責任者となります。1909年には軍を率いてチベットに入りましたが、同年に駐蔵大臣などを辞任し、川滇辺務大臣に専任となりました。

辛亥革命と最期

1911年、趙爾豊は再び四川総督に復帰し、四川省で発生した鉄道保護運動の鎮圧に奔走しました。しかし、武昌起義が勃発すると、四川省でも鉄道保護運動が革命派の蜂起と結びつき、情勢は急速に悪化します。趙爾豊は、もはや事態を収拾することができず、四川咨議局議長の蒲殿俊に政権を委ねて下野せざるを得なくなりました。

鉄道保護運動の鎮圧で革命派からの怨みを買い、さらには反動的蜂起を疑われていた趙爾豊は、同年12月、蒲殿俊の後任として四川都督に就任した尹昌衡によって逮捕されてしまいます。そして、成都で公開処刑されるという悲劇的な最期を迎えました。享年67歳でした。

趙爾豊は、清朝末期の混乱期において、四川省を中心にその行政手腕を発揮しましたが、革命の波に飲み込まれ、悲劇的な最後を迎えた人物として、歴史に名を残しています。

参考文献

徐友春主編『民国人物大辞典 増訂版』河北人民出版社、2007年。ISBN 978-7-202-03014-1。
陳祖武「尹昌衡」中国社会科学院近代史研究所『民国人物伝 第10巻』中華書局、2000年。ISBN 7-101-02114-X。

関連項目

* 1905 Tibetan Rebellion

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