軍事作戦

軍事作戦（ぐんじさくせん）とは

軍事作戦とは、上位の戦略や戦術を実行に移すために、特定の目標を達成すべく部隊が行う一連の具体的な軍事行動全般を指します。これには、部隊の移動、攻撃、防御、後退、補給といった様々な活動が含まれます。

作戦の計画と実行

作戦は、作戦戦略に基づき詳細な作戦計画（OPLAN）として策定されます。この計画は、作戦の効率を高めるために、定量的な分析手法である作戦研究（OR）などを活用することが望ましいとされています。過去には、作戦研究を軽視したことで悲惨な結果を招いた例も少なくありません。

計画の立案にあたっては、まず戦略的あるいは戦術的な状況を判断し、基本的な方針が決定されます。次に、与えられた任務、自軍の戦力、作戦地域の地理や気象、敵の状況といった情報を総合的に考慮して作戦見積もりが行われ、具体的な攻撃目標や部隊の配置などが定められ、実行に移されます。このような一連の作戦を指導する技術は「作戦術（operational arts）」と呼ばれています。軍事的な概念として、戦闘は作戦よりも小規模な下位の行動と位置づけられます。

多様な形態と名称

特定の地域における一連の作戦をまとめて「方面作戦（campaign）」と呼び、「戦役」と訳されることもあります。作戦が行われる主要な場所は「作戦正面」、部隊の出発点から作戦地域への後方連絡線は「作戦線」と呼ばれます。

二国以上の軍隊が協力して行う作戦は「連合作戦」または「共同作戦」と呼ばれます。特殊な技能を持つ部隊が遂行するものは「特殊作戦」、誰が実行しているか秘匿される作戦は「秘密作戦」です。

作戦は、その目標が達成されるか、あるいは計画が中止されることで終了します。通常、情報保全のため、作戦には秘匿のための名称が与えられます。

研究方法の変遷

作戦の研究や立案においては、第二次世界大戦頃までは、駒や図面を用いた兵棋演習や図上演習が一般的でした。しかし、現代ではコンピュータを用いたシミュレータなどが主流となっています。作戦全体の効率を分析する作戦研究に加え、作戦の成果を評価する作戦評価も行われます。

作戦遂行の基礎となる考え方

軍事作戦の行動方針は、上位の軍事戦略から方向付けられる作戦戦略によって規定されます。作戦戦略は、具体的な行動計画に基づき作戦目標や方針を定めるものです。作戦の遂行範囲は、典型的な戦時における大規模な戦闘を伴うものから、準戦時下での限定的な武力行使や平和維持活動、さらには平時における災害援助や民生支援など、非常に多様です。

戦闘は敵味方の戦力による武力衝突であり、戦力、時間、空間という三つの要素が関わります。戦力は陸海空の各軍種に大別され、それぞれ異なる機能を持っています。時間や空間の要素は気象や地理的環境と密接に関連し、特に作戦地域の地形や地物は、作戦行動に根本的な影響を与えます。

戦いの原則

効果的な作戦行動を導くための一般的な指針として、「戦いの原則」があります。これには以下のような要素が含まれます。

目標の明確化: 作戦の最終的な目的を明確に定めることが重要です。
主導権の確保: 能動的に部隊を動かし、戦闘を有利に進めるための主導権を握り維持すること。
速度: 部隊の移動や行動の速度を高め、有利な位置を獲得する能力。
戦力集中: 決定的な場所と時に戦力を集中し、戦闘力を最大限に発揮すること。
奇襲: 敵の意表を突くタイミングや場所で攻撃を行うこと。
警戒: 危険を事前に察知し、被害を最小限に抑えつつ、敵情や状況に関する情報を収集すること。
統一指揮: 複数の部隊が一元的な指揮の下で連携すること。
計画の簡潔性: 作戦計画は理解しやすく、実行可能なように単純であること。
戦力節約: 戦力（部隊、兵員、火力など）を効果的に運用し、無駄を避けること。

その他にも、物資の充足（物量の原則）、作戦規模の適切性（規模の原則）、有利な位置を獲得するための移動（機動の原則）、地形の活用（地形の原則）といった原則が考慮されます。

主な作戦の分類

軍事作戦はその性質によっていくつかのタイプに分類できます。

攻勢作戦と防勢作戦: 攻勢は敵に積極的に攻撃を仕掛け、損害を与えたり領域を奪取したりする作戦。防勢は敵の攻撃を迎え撃ち、自軍の戦力を維持しつつ敵の攻撃効果を最小化する作戦です。
内線作戦と外線作戦: 内線作戦は自軍が包囲された状況で内部から戦力を集中して防御する形態。外線作戦は自軍が敵を包囲する位置にあり、攻撃に有利な形態です。
決戦と持久戦: 決戦は敵戦力の徹底的な撃滅を目指す短期集中型の作戦。持久戦は自軍の保全を第一に考え、長期にわたり戦力を維持しながら戦う消耗戦志向の作戦です。
領域別作戦: 作戦が行われる領域によって、陸上作戦、海上作戦、航空作戦に分けられます。それぞれ地形、海象、気象といった環境条件や使用する戦力に合わせた特性があります。
統合・連合作戦: 統合作戦は異なる軍種（陸・海・空など）が連携する作戦。連合作戦は二カ国以上の軍隊が共同で行う作戦であり、指揮系統や連携において複雑さを伴います。

戦争以外の軍事作戦

大規模な武力衝突としての戦争に限定されない軍事作戦も多く存在します。これらは「戦争以外の軍事作戦」と総称され、平時や危機、準戦時において行われます。例えば、国際的な平和維持活動、国内の暴動鎮圧、大規模災害時の人道支援、特定の目的を達成するための特殊部隊によるコマンドウ作戦などがあります。特に「特殊作戦」は、通常の部隊では行わない高度な専門性を要する作戦であり、ゲリラ戦、心理戦、情報収集、人質救出といった多様な内容を含みます。

具体的な例

歴史上有名な軍事作戦には、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるソ連侵攻「バルバロッサ作戦」、連合軍によるノルマンディー上陸「オーバーロード作戦」、湾岸戦争での多国籍軍による「砂漠の盾作戦」「砂漠の嵐作戦」などがあります。日本軍の例としては、「南方作戦」や「インパール作戦」、「特別攻撃（特攻作戦）」などが挙げられます。実戦以外では、アメリカ軍の核実験「キャッスル作戦」や、1982年のフォークランド紛争におけるアルゼンチン軍の「ロザリオ作戦」、そして2011年の東日本大震災における在日米軍等による支援活動「トモダチ作戦」なども軍事作戦に含まれます。

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