軍旗祭

軍旗祭（ぐんきさい）とは

軍旗祭は、大日本帝国陸軍の各歩兵・騎兵連隊が、それぞれの駐屯地や出征先で開催した祝賀行事です。連隊の象徴である軍旗（連隊旗）の拝受を祝うとともに、普段は連隊長室に安置されている軍旗を屋外に移すことから、この名がつけられました。現代の陸上自衛隊における駐屯地祭や、学校の文化祭に相当するイベントでした。

軍旗祭の概要

開催日は、基本的に各連隊に軍旗が天皇から下賜・拝受された日、またはその前後の都合の良い日でした。軍旗祭は毎年開催され、「第〇〇回軍旗祭」のように回数を重ねていました。

祭典当日、連隊は一般市民に盛大に開放されました。軍旗や連隊長、来賓に対して栄誉礼や分列行進が行われ、銃火器などの兵器が展示されました。各中隊は、この日のために連隊内を華やかに飾り付け、出店を開き、趣向を凝らした出し物を制作しました。将兵は女装や仮装をしたり、劇や武道大会などの様々な余興を披露し、訪れた市民を大いに楽しませました。このように、軍隊が国民（一般市民）と深く交流できる数少ない機会であり、陸軍は市民に親しみを持ってもらい、結びつきを強めるための広報活動としても活用しました。軍旗祭は地元では名物となり、その様子は絵はがきとしても広く流通しました。

連隊の下士官兵たちは、支給された軍服の中で最も状態の良いもの、普段は儀式や外出時にしか着用しない一装品を身に着けました。将校や准士官とともに、この日ばかりは軍隊の堅苦しさを忘れ、軍旗祭を楽しみました。連隊公認でご馳走や酒が振る舞われ、無礼講で大いに盛り上がりました。

また、日本内地だけでなく、満州、朝鮮、台湾など、外地に駐屯する連隊でも、内地連隊と同様の軍旗祭が開催されました。歩兵・騎兵連隊だけでなく、軍旗を持たない砲兵・工兵・輜重兵連隊や、飛行連隊・飛行戦隊などでも、同様の記念祭が少なからず行われていました。

太平洋戦争（大東亜戦争）に突入すると、非常時となり、余裕がなくなったため、大戦前のような規模での軍旗祭はできなくなりました。連隊が出征し、本来の衛戍地には補充隊である留守部隊が設けられるなど、状況も変化しました。しかし、1944年（昭和19年）や1945年（昭和20年）という大戦末期の外地の戦地においても、従軍将兵の息抜きや、帝国陸軍の伝統を継承するため、内輪向けの軍旗祭は続けられました。

現代の陸上自衛隊における駐屯地祭は、この軍旗祭に相当する行事といえます。隊員（将兵）による出し物や出店、兵器の展示、音楽隊（軍楽隊）の演奏など、共通する点が数多くあります。

関連項目

航空百日祭
陸軍記念日
* のらくろ - 軍旗祭の様子を詳細に描いた回が存在する。

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