輸出加工区

輸出加工区（Export Processing Zone: EPZ）とは、特定の国や地域が、雇用増大、技術導入、外貨獲得を目的として設置する、税制上の優遇措置が適用される区域のことです。

一般的にEPZと呼ばれることが多いですが、自由貿易区（Free Trade Zone: FTZ）や保税加工区（Bonded Processing Zone: BPZ）といった別名で呼ばれることもあります。これらの区域では、輸入関税や法人税などの税制優遇が実施され、企業の進出を促進します。

歴史的には、1959年にアイルランドのシャノン空港に初めて開設されました。その後、工業化を推進する上で有効な手段として認識され、世界90カ国以上に広がりました。特に、開発途上国では、輸出加工区は産業発展の重要な拠点となっています。

日本企業は、東アジアや東南アジアの安価な労働力を活用するため、これらの地域に投資を行い、部品の輸出や組み立てを行っています。これにより、グローバルなサプライチェーンが構築され、国際的な貿易が活発化しています。

東南アジアには、ベトナムのハノイ、ハイフォン、ダナン、ホーチミン、タイのバンコク近郊のサムットプラカーン、マレーシアのペナン、プライ、ウルクラン、スンガイウェイ、セナイなど、多くの輸出加工区が存在します。また、インドネシアのジャカルタやバタム島、フィリピンのバギオ、バタアン、カヴィテ、マクタン島、シンガポールのジュロン工業団地などにも、多くの輸出加工区が立地しています。

その他、中華人民共和国の経済特区も輸出加工区の特徴を持っています。また、モーリシャス、メキシコのマキラドーラ制度（2001年に変更）、ブラジルのマナウスフリーゾーン、バングラデシュのダッカなど、世界各地に輸出加工区が設置されています。

輸出加工区は、グローバル経済において重要な役割を果たしており、各国の経済発展に大きく貢献しています。一方で、労働環境や環境問題など、課題も指摘されています。そのため、持続可能な発展を目指した取り組みも進められています。

関連用語として、加工貿易が挙げられます。加工貿易は、原材料を輸入し、加工後に輸出する貿易形態であり、輸出加工区はこのような貿易を促進するための重要な拠点となっています。


参考文献

* 大野健一・桜井宏二郎　『東アジアの開発経済学』　有斐閣〈有斐閣アルマ〉、1997年。

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