辛棄疾

辛棄疾（しん きしつ）：波乱の生涯を送った南宋の政治家・詞人

辛棄疾（1140年5月28日 - 1207年10月3日）は、南宋時代の政治家であり、同時に傑出した詞人として知られています。字は幼安、号は稼軒。山東省済南市歴城県の出身です。

金国での誕生と南宋への帰順

辛棄疾は、当時金国領だった亳州で、漢人官僚の家系に生まれました。若い頃は科挙に合格できませんでしたが、1161年に金国内が混乱すると、義勇兵を率いて金に反旗を翻し、耿京の率いる反乱軍に合流。書記として活躍しました。1162年、南宋への使者として派遣された際、耿京が暗殺されるという事件が発生。辛棄疾はわずか50名の部下と共に犯人を捕らえ、数万の兵を率いて南宋に帰順するという劇的な行動に出ました。

南宋での官僚生活と不遇

南宋に帰順後、辛棄疾は右承務郎・江陰軍籤判に任ぜられ、その後も建康通判、滁州知州など、地方官として数々の要職を歴任しました。地方官としては、富国強兵政策を推進し、金への対抗策を講じましたが、その積極的な姿勢が朝廷内の反発を招き、官職を罷免され、20年もの間、信州上饒県で隠棲生活を送ることを余儀なくされました。晩年になって韓侂冑に再び起用されましたが、すぐに罷免され、失意のうちに亡くなりました。

詞人としての名声

政治家としては不遇だった辛棄疾ですが、詞人としては非常に高い評価を受けています。愛国的な内容や、人生の機微を詠んだ作品を数多く残し、その作品は現在も広く愛されています。特に、金に対する故地回復の願いを込めた詞は、多くの人々の心を捉えました。彼の作品は『稼軒集』としてまとめられ、後世に伝えられています。北宋の蘇軾と並び「蘇辛」と称されることもあり、中国文学史における重要な存在です。また、検索エンジン「百度」の社名が彼の作品『青玉案』に由来することも、彼の文化的影響力を示す一例と言えるでしょう。

遺伝子に関する情報

辛棄疾のY染色体ハプログループはR1a(R1a1a1b2a)であることが判明しています。R1aは東ヨーロッパや中央アジア、インドなどで多く見られるタイプで、東アジアでは珍しいとされています。

映像作品

彼の生涯を題材とした映画も制作されています。

* 武神（原題：辛弃疾1162、中国、2020年、主演：シェー・ミャオ）

辛棄疾の生涯は、政治的な野心と愛国心、そして文学的な才能が複雑に絡み合った、波乱に満ちたものでした。彼の残した作品は、時代を超えて、今もなお私たちの心に響き続けています。

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