辜振甫

辜振甫（こ しんぽ）

辜振甫（1917年1月6日 - 2005年1月3日）は、中華民国（台湾）の著名な財界人で、政界にも影響力を持った人物です。台湾工商協進会の理事長、台湾証券取引所の初代理事長、そして海峡交流基金会の初代理事長を歴任し、台湾の経済発展と中台関係の進展に大きく貢献しました。字は公亮。祖籍は福建省恵安県で、台湾の五大家族の一つである名家の出身です。

生い立ちと初期の活動

日本統治下の台湾で、一代で財閥を築いた辜顕栄の五男として生まれた辜振甫は、台北帝国大学法学部を卒業後、東京帝国大学でビジネス管理などを学びました。第二次世界大戦終結後、日本の敗戦時に、台湾独立を画策し、日本軍関係者と連携して台湾総督に協力を求めましたが拒否され、国土不法占拠共謀罪で逮捕されました。禁固刑を経て台湾に戻り、中国国民党政権の土地改革に協力し、その見返りとして得た事業で、父から引き継いだ事業を発展させました。

台湾財界での活躍

辜振甫は、台湾工商協進会の理事長や台湾証券取引所の初代理事長を務め、台湾経済界の重鎮として活躍しました。彼のリーダーシップのもと、台湾の経済は大きく成長し、国際的な経済活動にも積極的に関与しました。また、台湾セメントをはじめとする多くの事業を手掛け、その経営手腕を発揮しました。

中台関係への貢献

1982年には、中国国民党中央常務委員となり、1990年には国家統一委員会委員や海峡交流基金会の初代理事長に就任し、中台関係の交渉役を担いました。1993年には、海峡両岸関係協会の汪道涵会長との間で、シンガポールで初のトップ会談（辜汪会談）を実現させました。その後も上海や北京で汪会長や中国共産党総書記の江沢民と会談し、両岸関係の改善に尽力しました。

晩年と功績

李登輝政権下では、長く総統府資政を務め、総統特使としてAPECにも3回参加するなど、1990年代の台湾の政策決定において重要な役割を果たしました。また、日台国交断絶後には、両国間の窓口機関設置に関与するなど、日本の政財界とのつながりも深く、晩年には早稲田大学から名誉博士号が授与され、同大学内庭園に名前が付けられました。

辜振甫は、京劇を愛好し、自らも舞台に立つほどの熱心なファンでした。特に、諸葛亮の役を好んで演じ、「借東風」や「空城計」などの演目で観客を魅了しました。1998年には日本で公演も行っています。

2005年、辜振甫が亡くなった際には、台湾政府は国立国父紀念館で追悼式を執り行い、陳水扁総統は彼を「台湾社会が最も尊敬した人物」と称えました。また、中国側からも弔問団が訪れ、日本からも多くの要人が参列しました。彼の死は、台湾のみならず、国際社会にとっても大きな損失でした。

親族

異母弟に台湾独立運動家の辜寛敏、その子にリチャード・クー（辜朝明）がいます。また、妻は厳復の三男の娘である厳倬雲です。

関連事項

台湾問題
中台関係
* 台湾セメント

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