辻堂元町

辻堂元町（つじどうもとまち）は、神奈川県藤沢市の南部、引地川沿いに広がる町域です。現在の行政区分としては、住居表示が実施された一丁目から六丁目までが存在します。町域の北側にはJR東海道本線が東西に走っており、町内には駅はありませんが、北西部の住民にとっては辻堂駅が生活圏となっています。

地理的には、辻堂元町は東を本鵠沼、南を辻堂太平台および辻堂東海岸、西を辻堂、そして北を辻堂新町に接しています。町域は西から順に一丁目から六丁目まで区画されており、特に六丁目の広大な敷地はかつて工場として利用されていた場所が多く含まれています。

この地の歴史は古く、平安時代には大庭御厨の一部であり、伊勢神宮の荘園として開拓されました。中世には鎌倉景正による開発が進み、広域地名としては「八的ヶ原」、後に「八松ヶ原」とも呼ばれました。近世に至るまで、辻堂村の中心地として発展し、近代には京浜工業地帯の一角として数々の工場が立地し、地域の産業を支えました。

明治時代に入ると、度重なる村の合併を経て、明治村、そして藤沢町の一部となりました。1940年（昭和15年）に藤沢町が市制を施行し藤沢市となると、その町域に組み込まれます。戦後も工業地帯としての性格を保ちましたが、時代と共に交通網が整備され、1967年（昭和42年）には住居表示が実施され、現在の辻堂元町一丁目から六丁目が誕生しました。

特に近年、辻堂元町六丁目の旧パナソニックグループ工場跡地は、未来を見据えた大規模プロジェクトの舞台となりました。この約19ヘクタールの広大な土地には、環境と共生する新しい街、「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン（Fujisawa SST）」が計画され、実現に至りました。ここでは、太陽光発電や家庭用蓄電池などの先進技術が街全体に導入され、各家庭がネットワーク化されたスマートハウスとして繋がり、エネルギーやセキュリティなどが一元管理されています。藤沢市とパナソニックが中心となり、アクセンチュア、オリックス、三井不動産など多くの企業が連携して開発が進められ、2014年（平成26年）にまちびらきを迎えました。このプロジェクトは、藤沢市が掲げる環境創造都市構想を象徴するものであり、「藤沢モデル」として国内外から注目されています。この成功は、横浜市綱島でのTsunashima SSTなど、他のスマートタウン開発にも繋がっています。

交通アクセスに関しては、前述の通り町内に鉄道駅はありませんが、北西部の住民はJR辻堂駅を利用可能です。町内には神奈川中央交通や江ノ電バスの路線バスが運行しており、藤沢駅北口や辻堂駅南口、茅ヶ崎駅南口、辻堂団地など、周辺地域への移動手段を提供しています。主要な道路としては、神奈川県道30号戸塚茅ヶ崎線や神奈川県道308号辻堂停車場辻堂線が町域を通っています。

町内には藤沢市立八松小学校や辻堂郵便局などの公共施設が立地しており、住民の生活を支えています。住宅地の地価は、2023年（令和5年）時点の公示地価で、代表的な地点において1平方メートルあたり24万5000円となっています。歴史を刻みながらも、新たな技術を取り入れ、未来型の街づくりが進む辻堂元町は、進化を続けるエリアとして注目されています。

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