近江攻防

近江攻防の詳細

近江攻防は、治承・寿永の乱（1180年 - 1185年）の初期に、近江国（現在の滋賀県）を中心に展開された、源氏勢力と平家勢力との間の武力衝突です。この戦いは、全国的な源氏の蜂起の動きと、それに対する平家の鎮圧作戦の一環として位置づけられます。

戦いの背景

1180年10月、富士川の戦いで平家が敗北すると、その影響は各地に波及し、同年11月には尾張・美濃で源氏が蜂起しました。これに呼応するように、11月20日には近江源氏の山本義経・柏木義兼兄弟が挙兵。近江源氏は、北陸と平安京を結ぶ物流の要所である琵琶湖を支配下に置き、北陸からの年貢を差し押さえました。さらに、園城寺の僧兵も近江源氏に協力し、その連合軍は一時的に平安京を脅かすほどの勢力となりました。

また、近江源氏は東国の甲斐源氏とも連携を取っていたとされています。これは、『玉葉』という歴史書に、近江源氏が武田信義と連絡を取り合っていたという記述があることからも裏付けられます。さらに同書には、若狭国の在庁官人もこの反乱に同調する動きを見せており、後の北陸地方での反乱勢力の活発化を予感させるものでした。

平家の反撃

各地で源氏の蜂起が相次ぐ中、平家は反撃に転じます。福原に遷都していた朝廷は、11月21日に平安京への還都を決定し、26日には平清盛が平安京に戻りました。高倉上皇は、近江の寺社勢力に対して謀反人追討の院宣を発令しました。

12月1日には、平家の家人である平田家継が近江源氏への攻撃を開始。翌2日には平知盛が追討軍を率いて出陣しました。12月6日の戦闘で、平知盛らの軍勢が近江源氏を打ち破り、敗れた近江源氏の兵の多くは美濃へと逃れて抵抗を続けました。また、平家は園城寺内の反乱軍に同意した僧兵も攻撃し、その結果園城寺の一部が炎上する事態となりました。

戦いの終結とその後

12月13日には、近江で最後まで抵抗を続けていた山本義経が、馬渕城から追い落とされました。しかし、12月24日頃には山本城に籠城して抵抗を続けていたことが確認されています。その後、山本義経は1183年の源義仲軍の上洛に同行することになります。

12月中に近江の攻防は終息に向かいましたが、南都勢力の活動が活発化し、尾張・美濃の源氏は翌年まで反乱活動を継続しました。近江攻防は、その後の源平合戦の展開を占う上で重要な戦いの一つと言えるでしょう。

参考文献

* 上杉和彦『源平の争乱』吉川弘文館〈日本の戦争史 6〉、2007年2月16日。ISBN 978-4642063166。

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