近江鉄道700系電車

近江鉄道700系電車

近江鉄道700系電車は、近江鉄道が所有していた特別な電車です。1998年（平成10年）に、近江鉄道の100周年と八日市駅の新駅舎完成を記念して、西武鉄道の401系電車を改造して製造されました。

概要

この電車は、イベント列車としても使用できる多目的車両として設計されました。愛称は「あかね号」で、これは蒲生野で詠まれた万葉歌に由来しています。外観は、種車である西武401系とは大きく異なり、流線形のデザインが特徴です。前面には大きな窓が設置され、展望も楽しめるようになっています。車体色はクリーム色を基調とし、赤と青のラインが側面を飾っています。

内装は、車端部を除いて転換式クロスシートが採用されており、座席間隔は1020mmとゆったりしています。これは、近江鉄道と接続するJRの新快速などが転換クロスシートを採用していることを考慮したもので、特にJRとの乗り換えが多い八日市線での利用者に快適さを提供しました。

当初は2両編成1本のみが製造されましたが、後に増備車として401系を種車とした第2編成も計画されました。しかし、この第2編成は実際には700系とはならず、800系として別の形式で登場しました。

形式

モハ700形
貴生川駅側の制御電動車で、主制御器を搭載しています。連結面寄りには菱形のパンタグラフが設置されています。
モハ1700形
米原駅側の制御電動車で、電動発電機と空気圧縮機を搭載しています。

運用

700系は、竣工当初から大きな変更なく運用されてきました。しかし、2015年には前面窓の上部にLED式の行先表示器が新設され、それまで使われていた正面窓下の字幕式表示器には、新たに「あかね」のヘッドマークが掲出されました。また、ドアの開閉時にはドアチャイムが鳴るように改良されました。

残念ながら、老朽化のため2019年5月6日にさよなら運転を行い、翌5月7日付で廃車となりました。しかし、「あかね号」の愛称と塗装は後継の900形に受け継がれ、現在もその姿を見ることができます。

参考文献

ジェー・アール・アール『私鉄車両編成表 2019』交通新聞社、2019年。ISBN 978-4-330-98219-9。
ジェー・アール・アール『私鉄車両編成表 2020』交通新聞社、2020年。ISBN 978-4-330-06020-0。

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