近江鉄道LE10形気動車

近江鉄道LE10形気動車は、近江鉄道がかつて保有していた内燃動車、いわゆるレールバスです。近江鉄道の路線は全線が直流電化されていますが、電力コストの削減を目的として、内燃動車が導入されることになりました。この目的のために、5両のLE10形気動車が製造されました。

これらの車両は、富士重工業が開発したLE-CarIIと呼ばれる12m級の二軸車をベースにしています。車体は富士重工製のバスのものを、エンジンは日産ディーゼル（現在のUDトラックス）製のバス用エンジンを流用することで、製造コストを抑えました。1984年に製造された名古屋鉄道キハ10形気動車と車内仕様は共通していますが、LE10形は大型バス用の230psエンジンを搭載しており、中型バス用エンジンを使用していた名鉄キハ10形よりも出力が高くなっています。また、エンジン直結式の冷房装置を搭載したため、近江鉄道としては初の冷房車となりました。

1986年、LE10形は貴生川駅 - 八日市駅間の閑散区間での運用を開始しました。しかし、ラッシュ時の旅客収容能力が低かったため、早期に2両編成での運用に切り替えられました。これにより、導入当初の目的であったコスト削減効果は薄れてしまいました。さらに、バスの構造を応用した軽量な車体は、予想以上に早く老朽化が進み、1996年には運用を終えることになりました。

運用終了後、LE10形は車籍を保持したまま彦根工場内で休車となっていました。2004年7月1日には全車が廃車となり、その後、11・12号車と14・15号車は解体されました。13号車のみが解体を免れ、彦根車庫に留置されていました。その後、彦根駅構内に近江鉄道ミュージアムが開業すると、同所で保存・展示されましたが、老朽化が進行したため2012年に解体されました。

特筆すべき点として、LE10形は導入当初、車体が軽量過ぎたためにレール表面の錆が取り除けず、信号電流の通電不良を引き起こし、踏切警報機が正常に作動しないという問題が発生したとされています。

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