近藤乾三

近藤乾三の生涯と業績

近藤 乾三（こんどう けんぞう）は、1890年11月3日に東京市下谷区で誕生したシテ方宝生流の能楽師です。彼は近藤敦吉の次男として生まれ、幼少期から自身の父に師事し、6歳で謡曲を学び始めました。最初の舞台は1899年の『鞍馬天狗』で、子方として登場し、ここから彼の能楽師としての道が始まりました。

1901年には十六世宝生九郎に入門し、内弟子として厳しい修行を積みます。当時、彼の兄弟子には松本長や野口兼資がいました。これらの経験が、彼の後の能楽界における位置を確立する基礎となりました。1905年には『草薙』で初めてシテを務め、その後、数多くの演目で高い評価を受けることになります。

1954年には文部省芸術祭賞、1960年には日本芸術院賞を受賞し、彼の才能と功績が広く認知されるようになりました。また、1966年には重要無形文化財保持者（いわゆる人間国宝）に認定され、彼の確かな技術と深い理解が評価されることとなりました。

その後、1971年に病気を患いますが、彼はそれ以降も独吟や一調などの形式で舞台に立ち続けました。1976年には日本芸術院の会員に選ばれ、さらに1977年には勲三等瑞宝章を受章するなど、日本の伝統文化に対する貢献が高く評価されました。1985年には文化功労者としても認められ、生涯にわたって日本の能楽の発展に寄与しました。

彼の舞の特徴は、重厚で力強いスタイルであり、『藤戸』や『俊寛』、さらには『景清』といった当たり役が挙げられます。これらの演目における彼の表現力や演技力は、多くの観客やファンから称賛を受けました。また、彼は家族にも恩恵を与え、長男の近藤乾之助もシテ方宝生流の能楽師として活躍しています。

私生活においては、妻は小鼓方大倉流宗家の大倉六蔵の二女・喜久であり、彼らの家庭は能楽に深く根ざした環境でした。近藤乾三は、1980年に著書『能 わが生涯』を発表し、後に2005年に新版が日本図書センターから出版されました。これにより、彼の人生や技術、能楽に対する思いが多くの人々に伝わることになりました。

また、近藤乾三の名演奏を収録したDVD「能楽名演集 『鉢木』」も制作され、彼の貴重な舞台パフォーマンスが後世に伝えられています。彼の業績とその影響は、現在の能楽界においても色濃く残っており、彼の存在は今後も日本の伝統文化の重要な一部として語り継がれることでしょう。

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