近鉄20100系電車

近鉄20100系電車（あおぞら号）

近鉄20100系電車は、近畿日本鉄道が1959年に導入した世界初のオール2階建て電車であり、「あおぞら」の愛称で親しまれています。この電車は主に修学旅行向けに設計されており、小学生を中心に団体専用の列車として運用されていました。

概要

近鉄20100系の前身となるのは、1959年に登場した10100系「新ビスタカー」です。新ビスタカーは名阪ノンストップ特急として運用され、名古屋と大阪間の輸送シェアを拡大しました。当時、伊勢志摩へ向かう修学旅行は、旧型車両の急行や臨時列車が利用されていましたが、2階建て電車が人気を得る中で、修学旅行の小学生たちもその恩恵を受けることができるようになったのです。「あおぞら」の名称は公募によって選ばれ、大阪市立玉川小学校の児童によるものでした。

この系列は1963年に鉄道友の会からブルーリボン賞を受賞するなど、その革新性が高く評価されました。

車種構成

近鉄20100系は、以下の3つの形式から成り立っています。

• - モ20100形（上本町寄り制御電動車）
• - サ20200形（中間付随車）
• - モ20300形（宇治山田寄り制御電動車）

合計で5編成が製造され、主に大阪線と名古屋線に配置されました。

車体とデザイン

この電車は全車両が2階建てで構成されており、一般的な2軸ボギー車の20m級車体を採用しています。乗降扉は平屋部分に設けられ、片引き戸が2か所設置されています。全車が客席として利用されており、通常の電動車としての設備は一切なく、主要機器は中間のサ20200形に配置されています。

全車両は大型の車体を持ち、前面は特徴的な左右非対称のデザインが施されています。また、クリームとマルーンレッドのツートンカラーで塗装され、「VISTA CAR」のロゴも配されています。

車内設備

車内は、修学旅行用に設計されており、通路を挟んで片側3人掛け、反対側に2人掛けのボックス型クロスシートが配置されています。このため立席は設けられておらず、収容力を高める工夫がなされています。2階の席には階段を設けており、1階から2階へのアクセスが可能です。

トイレは中間のサ20200形に和式トイレが2つ設置されていますが、冷房装置は搭載されず、開閉式の窓を通じて外気を取り込む形での運用が行われていました。

主要機器

走行機器は1480系の仕様を反映しており、主電動機は三菱電機製のMB-3020-Dが使用されています。駆動装置はWNドライブが採用されており、その性能は平坦線で125km/hに達することができます。主制御器も三菱製で、各車両に4基ずつの主電動機を直列に配置しているのが特徴です。

運用と終焉

製造された5編成は主に伊勢志摩への修学旅行や団体輸送に使用され、冷房のない非冷房車として問題視されました。1970年頃には運用に余裕が生まれる一方で、第二次ベビーブーム世代が過ぎ去るにつれてその需要は減少しました。1989年には新しい代替車両が登場し、さよなら運転を経て運行が終了。残った第1編成はイベントで一時的に走行した後、1994年に解体されました。

参考文献

• - 飯島厳・藤井信夫・井上広和著『私鉄の車両1 近畿日本鉄道I 特急車』保育社、1985年

このように、近鉄20100系電車「あおぞら号」は特異なデザインと機能を持ち、移動手段として只是りもなく、その歴史的意義も重要なものでした。

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