迦留陀夷

迦留陀夷（かるだい）について

迦留陀夷は、釈迦の弟子の一人として知られています。しかし、仏典には同名または類似した名前の人物が複数登場し、その関係性は複雑です。特に、北伝の大乗仏教においては、悪事を働いたとされる六群比丘の一人、ラールダーイと同一視されることが多く、混同が見られます。

名前について

迦留陀夷の名前は、サンスクリット語でKālodāyīまたはKāludāyī、パーリ語ではKāludāyīと表記されます。その他、迦楼陀夷などの音写や、迦慮、優陀夷、優陀耶、憂陀耶、烏那曳嚢などの音略、黒光、黒曜、黒上、出現、時起などの漢訳があります。Udāyīは彼の本名ですが、肌の色が黒かったことからKāludāyī（黒光、黒曜）と呼ばれるようになりました。

『有部破僧事』によると、彼の肌が黒くなった理由は、路上で毒蛇を切り、その毒気に当てられたためとされています。

三人のウダーイー

仏典には、Udāyīという名前の人物が複数登場し、同一人物とする説と別人とする説が混在しています。『テーラガーター』（長老の詩）の註釈によると、以下の3人のウダーイーが存在するとされます。

1. Kāludāyī（カールダーイー）: 釈迦仏と同日に生まれ、クシャトリア出身で、仏が太子の頃からの友人であったとされる人物。仏が成道後に故郷カピラ城へ使者として迎えられたとされています。
2. Mahā-Udāyī（マハー・ウダーイー）: カピラ城のバラモン種出身で、仏が成道後に帰城した後に出家したとされる人物。
3. Udāyī（ウダーイー）: しばしば問題を起こし、仏から叱責を受けた人物。パーリ語系の註釈書ではLāludāyīと呼ばれています。

これらのウダーイーを同一人物とみるか、別人とするかは、仏典や註釈書によって見解が異なります。本項では、釈迦が太子時代からの友人であるKāludāyīを中心に記述します。

来歴・人物

迦留陀夷はカピラ城の出身で、クシャトリアの家系でした（バラモン出身説もあります）。釈迦と同じ日に生まれ、太子（釈迦）の誕生を祝う500人の大臣の息子の一人でした。彼は享楽を好み、辞を尽くして楽しんでいたと伝えられています。浄飯王は彼に結婚を勧めたこともあったと言います。

因果経2によると、彼はバラモンの子Udāyīとして、太子の四門遊観にも同行しました。その後、太子が出家し成道して仏となった後、浄飯王の命により車匿と共に仏を迎えに行き、そこで仏弟子となりました。後に帰城の許しを得たと言われています。

彼は釈迦仏の時に初めて功徳を積み、仏の親類として生まれ、後に出家して四無礙解を得たとされます。仏は彼を弟子の中で最も家族に信頼される者としました。また、仏に侍従して托鉢し、共に林に入り書座しました。夕暮れに禅定から立ち上がり、仏に「世尊、私のために多くのことをしていただきました。非時の食事を禁じ、衣食を断つように、非時に村に入るななどと命じられたときは不快に思いましたが、世尊の威徳を敬い、その命に従ったことで心身が快楽になり、ついに進歩することができました」と申し上げました。仏はこれを賞賛し、法を説いたとされています。

ダンマパダによると、彼は鹿子母講堂で入寂しましたが、波斯匿王が彼を訪ねようとした時、月が昇り、その月光と王の光、仏の光、そしてKāludāyīの光が互いに輝き合ったとされています。

所伝

「十誦律」には、迦留陀夷がもとは六群比丘の一人として非行を働いていたと記されています。しかし、彼は後に悔悟し、修行を重ねて証果を得たとされています。かつて舎衛城で多くの家を汚辱したことを反省し、その家々を清浄にしようと、999家を済度しました。そして、最後の1家を済度した時に、その家によって殺害されたと伝えられています。

その家はバラモンで、迦留陀夷は夫婦から供養を受けました。夫婦は子供に「自分たちが亡くなった後も同じように供養するように」と教え、子供もそれを約束しました。しかし、その妻が賊と密通し、迦留陀夷がその家で淫欲や破戒を責め、離欲や持戒を讃える説法をしたところ、密通が発覚することを恐れた妻が、賊と謀って彼を殺害しました。迦留陀夷は、日没後に糞の集積所に向かったところを殺され、頭を糞の中に埋められました。

釈迦仏はこれを知って諸比丘を率いて糞の集積所に赴き、彼の遺体を城外に運び出して火葬しました。コーサラ国の波斯匿王もこの事件を知り、そのバラモン家を滅ぼしたとされています。

このように、迦留陀夷の生涯は、仏教の教えと人々の行いの複雑さを物語るものとして、様々な側面から語り継がれています。

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