迹見赤檮

迹見赤檮：飛鳥時代の舎人と物部守屋討伐

迹見赤檮は、飛鳥時代を彩った重要な人物の一人です。舎人として、押坂彦人大兄皇子（彦人皇子）あるいは聖徳太子に仕えたと伝えられています。彼の出自については諸説あり、『新撰姓氏録』では毛野氏族に属する皇別氏族とする説が有力ですが、渡来系氏族とする説や、物部氏の一族とする説も存在します。さらに、跡見家の伝承では天児屋命の子孫とする説もあります。

赤檮が歴史に名を残すのは、仏教の受容を巡る激しい政治闘争、そして物部守屋討伐における活躍です。当時、蘇我馬子ら崇仏派と、物部守屋ら排仏派の対立は激化していました。この対立は、皇位継承問題とも複雑に絡み合い、用明天皇の崩御を機に、大きな争乱へと発展します。

用明天皇の重病と崩御を機に、蘇我馬子と物部守屋、そして神祇を司る中臣勝海の対立は頂点に達します。馬子は仏教への信仰を推進しようとしますが、守屋と勝海は強く反対します。勝海は、彦人皇子と竹田皇子の呪詛を行い、さらに蘇我氏に対抗しようとします。しかし、状況不利を悟った勝海は彦人皇子に帰服します。この時、赤檮は帰路につく勝海を待ち伏せし、これを討ち取ります。この行動は、蘇我馬子の指示によるものだったという説もあります。

用明天皇の崩御後、守屋は穴穂部皇子を擁立しようとしますが、馬子によって穴穂部皇子は殺害されます。馬子は物部氏討伐を決意し、大軍を率いて守屋の本拠地へと進軍します。物部氏の精強な兵は激しく抵抗し、討伐軍は苦戦を強いられます。この戦いで、赤檮は守屋を射殺するという重要な役割を果たします。一説には、厩戸皇子（聖徳太子）から、四天王像を刻んで戦勝を祈願した矢が与えられたとも伝えられています。

物部氏の敗北後、赤檮は戦功によって一万田の土地を与えられました。現在、八尾市南太子堂には、赤檮が守屋を射た矢を埋めたとされる鏑矢塚と、弓を埋めたとされる弓代塚が残されています。

赤檮の墓については、『和漢三才図会』や『大和名所図会』に記述がありますが、正確な位置は不明です。大和郡山市小泉町にある小泉大塚古墳が赤檮の墓であるという伝承もありますが、考古学的には古墳時代前期前半の築造とされており、年代的に疑問が残ります。

迹見赤檮は、飛鳥時代の政治的混乱期にあって、重要な役割を果たした人物として歴史に刻まれています。彼の生涯は、権力闘争の激しさや、信仰と政治の複雑な関わりを如実に示すものであり、現代においても多くの謎と興味を呼び起こしています。その出自、そして物部守屋討伐における彼の活躍は、今後も研究が続けられる重要なテーマであり続けるでしょう。

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