造東大寺司

造東大寺司（ぞうとうだいじし）について

造東大寺司は奈良時代の後半、具体的には天平20年（748年）に創設された官庁で、主に東大寺の建設や関連する写経事業を担当しました。この機関は、延暦8年（789年）まで存続し、その間に多くの下部機構や関連機関を持ち、その規模はまるで省に匹敵するほどでした。全盛期には数多くの部門が設けられ、政所や木工所、造瓦所、鋳所、写経所、造物所、造仏所などが含まれ、様々な専門家が集まりました。

創成期の背景

造東大寺司の写経部門は、藤原安宿媛（後の光明皇后）の発願によって727年に創設された写経所からその前身を持ち、後に金光明造仏所に統合されました。営繕部門は744年に金光明寺造仏所として設置され、747年には東大寺盧舎那仏像の建立を担うために平城京へと移転しました。

造東大寺司が初めて文書に登場するのは748年のことで、当時の役職者である佐伯今毛人がその次官として記されています。この時点では長官が存在せず、実際には次官が運営の実権を握っていました。おそらく、設立初期は官職の整備が進んでいなかったことを示しています。

組織と運営

設立当初からの構成は複雑で、知事には市原王、次官には佐伯今毛人、造仏長官には国君麻呂がそれぞれ任命されていました。天平勝宝4年（752年）には、判官や主典もそれぞれ4名ずつ置かれるなど、組織の拡大が進みました。また、天平勝宝7年（755年）からはようやく長官が正式に任命され、以降は四等官制が導入されました。

造東大寺司は、その後も官人の任命において時代の政治状況を反映させつつ発展を続け、天平宝字6年（762年）頃から機構はさらに複雑化しました。写経部門を束ねるための写経所も設置され、各種の専門家が集まって業務にあたりました。運営の中では、数多くの官人だけでなく優婆塞や知識人までも参画し、様々な役割を果たしました。

財政と経済的背景

造東大寺司の財源は主に封戸物から成り立っており、官人たちはその流通経済とも密接に関わっていました。仲麻呂の政策が影響を及ぼす中で、経営主体が変遷しつつも、造東大寺司は当時の政治的環境の中で独自の役割を果たしました。794年に最終的に停廃されるまで、東大寺の造営に関与していたことがわかります。

終焉とその後

造東大寺司は789年に停廃され、その後は縮小されながらも三綱管轄下の東大寺造寺所に引き継がれ、平安時代中期には東大寺修理所に発展していきました。造東大寺司に関連する文書は、正倉院に保存され、今なおその重要性が認識されています。

このように造東大寺司は、奈良時代における東大寺の重要な造営機関であったことが確認されており、その影響と役割は日本の歴史において大きな意義があります。

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