逸見昌経

逸見昌経：戦国を駆け抜けた武将の生涯

逸見昌経（へんみ まさつね）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、その生涯は激動の時代を反映したものでした。彼は若狭武田氏、三好氏、織田氏という異なる勢力に仕え、それぞれの立場で重要な役割を果たしました。

若狭武田氏の家臣として

逸見氏は甲斐源氏の流れを汲む家柄で、代々武田氏に仕えていました。昌経も初めは若狭国の守護である武田信豊に仕え、丹波での松永長頼との戦いに参加しました。しかし、松永氏の調略により武田家中の戦意は低下し、信豊は若狭へ帰国、隠居という決断をします。

三好氏の勢力下へ

信豊隠居後、若狭守護の座を巡り信豊と子の武田義統が対立すると、昌経は信豊に味方し義統に対抗します。近江に下った信豊に代わり、丹波の松永長頼の援軍を得て武田義統に抵抗を続けました。この頃から昌経は三好長慶政権の勢力下の武将として活動し、朝倉・武田連合軍と争いました。

永禄4年（1561年）には、朝倉義景の援軍を得た武田義統の軍勢に敗れ、居城である砕導山城を去ることになります。その後、武田信豊・義統親子は和睦しますが、昌経は永禄8年（1565年）に内藤氏（松永長頼）の大規模な援軍を得て再び高浜に入り、高浜城を築いて本拠としました。翌永禄9年（1566年）には水軍を編成して小浜の武田義統を攻めるも敗北し、逆に高浜城は武田氏のものとなり、義統が一時入城する事態となりました。

永禄10年（1567年）に武田義統が死去し、その子・元明が朝倉氏により一乗谷へと移送・軟禁されると、高浜に再び攻め込み大飯郡西部の平定に成功します。

織田家臣として

織田信長の勢力が若狭に及ぶと、昌経は信長の家臣となり、朝倉・武田軍との戦いに従軍しました。その後は織田氏の家臣団の一員として、若狭衆の筆頭として織田氏に仕え、武田元明が若狭に帰国した後も信長から高浜城5,000石の城主として認められました。さらに、武田方の武将である武藤友益が改易されると、その領地であった石山3,000石を加増されました。

天正9年（1581年）には京都馬揃えに参加しますが、同年4月16日に病死しました。遺領8,000石のうち、高浜城5,000石は丹羽長秀家臣の溝口秀勝に、新知分3,000石は武田元明にそれぞれ分配されました。

昌経には子がいなかったため、逸見氏は断絶したとされていますが、『若狭郡県志』によれば源太虎清という子がいたとも伝えられています。信長が意図的に逸見氏の没落をはかったという説も存在します。

その後、弟である逸見経久の子、昌久が徳川譜代大名奥平信昌の家臣となり、幕末まで家禄を繋ぎました。

逸見昌経は、激動の戦国時代を生き抜き、幾多の主君に仕えながらも、その才覚と武勇を発揮した人物でした。彼の生涯は、戦国時代の武将の生き様を鮮やかに映し出しています。

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