遊子水荷浦の段畑

遊子水荷浦の段畑について

愛媛県宇和島市遊子にある遊子水荷浦の段畑は、宇和海のリアス式海岸沿いの急斜面に、石垣を積み上げて作られた階段状の畑地です。この独特な景観は、まるで古代遺跡のようにも見え、「宇和海のピラミッド」とも称されています。四国八十八景の45番にも選ばれており、その美しさは多くの人々を魅了しています。

歴史的背景

この段畑が作られた背景には、宇和島地方の地形的な特徴が深く関わっています。山が海に迫る地形のため、耕地が限られていました。江戸時代、宇和島藩は領民にイワシ漁を奨励する一方で、山の開墾は自由としました。このことが、段畑の開墾を促すきっかけとなりました。幕末から明治にかけて人口が増加し、養蚕が盛んになると、カイコの餌となる桑畑が必要となり、大正時代にかけて斜面に石垣を築き、畑が広がりました。

段畑の構造

平均40度の急斜面に、高さ1メートル以上の石段が築かれ、その間に幅1～2メートル程度の畑が作られています。最も高い場所では海抜90メートルまで続き、約3.4ヘクタールの広さに1000近い段畑が広がっています。

耕作と変遷

かつては、段畑でサツマイモや麦などが栽培されていました。特にサツマイモは、焼酎の原料として九州にも出荷されていたほどです。しかし、昭和30年代以降、耕作放棄地が増え、多くの段畑が森に戻ってしまいました。現在では、約20戸の農家がジャガイモを中心に栽培し、段畑の景観を維持しています。

重要文化的景観としての価値

2007年、遊子水荷浦の段畑は、四国地方で初めて重要文化的景観に選定されました。これは、段畑が宇和海沿岸で営まれてきた半農半漁の暮らしを示す貴重な景観であると認められたことを意味します。

保全活動

重要文化的景観に選定されたことを機に、「段畑を守ろう会」が結成され、保全活動が活発化しました。耕作放棄地の再生や、景観の維持に地域の人々が取り組んでいます。

イベントと施設

ふる里だんだんまつり: 初掘りジャガイモの即売会を中心とした収穫祭が、4月から5月の間の1日開催されます。
段畑ライトアップ: 8月から9月の間の1日、竹とロウソクの灯りで段畑を照らす、幻想的な夕涼みの会が開催されます。
だんだん茶屋・だんだん屋: 「段畑を守ろう会」が運営するレストランと直売所。段畑で収穫されたジャガイモを使った焼酎「段酎」も販売されています。

アクセス

自動車: 愛媛県道346号蔣淵下波線を利用。
路線バス: JR宇和島駅から宇和島自動車蒋渕線に乗車、「水ケ浦」で下車（約60分）。
高速船: 新内港から盛運汽船に乗り、「水ヶ浦」で下船（約16分）。

その他

遊子水荷浦の地名は、生活に必要な水を担ぎ上げていた苦労に由来すると言われています。

段畑は、その独特な景観と歴史的な背景から、多くの人々を魅了し続けています。地域住民の努力によって保全活動が進められ、貴重な文化的景観として後世に受け継がれていくことが期待されています。

参考情報

四国のみずべ八十八カ所: 平成15年3月に選定
美しい日本のむら景観百選: 平成3年度に選定
日本風景街道: 2007年（平成19年）11月、南いよ風景かいどうのエリアとして登録。

外部リンク

段畑を守ろう会HP
* 宇和島市観光物産協会】'>遊子水荷浦の段畑（段畑を訪れる）【宇和島市観光物産協会】

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