道東バス
道東バス株式会社（どうとうバス）は、かつて北海道帯広市に本社を構え、バス事業を展開していた企業です。第二次世界大戦中の旅客運送事業統合の流れで一旦帯広乗合自動車に統合された後、戦後の事業再編によって分社化される形で設立されましたが、最終的には再び十勝バスへ合併されることとなりました。
1942年（昭和17年）10月12日に発令された北海道における旅客自動車運輸事業統合要綱、いわゆる戦時統合により、十勝支庁管内のバス事業者は帯広乗合自動車の傘下に統合されました。しかし終戦後、帯広乗合自動車の経営層に加わっていた旧事業者の関係者たちが、事業の再分割について議論を始めます。1946年（昭和21年）7月からは、旧事業者ごとの独立採算制が試行されました。その中で、旧小泉自動車、旧佐々木自動車、旧糠内自動車、旧止若自動車が担当していた路線、具体的には止若（現在の幕別町の一部）や池田町、足寄町方面への路線を新しい会社に引き継がせる形で、道東バス株式会社が設立される運びとなりました。1951年（昭和26年）12月28日付で分割が正式に認可され、翌1952年（昭和27年）4月1日に分割手続きが完了。これにより道東バスは、9つの運行系統と13台の車両をもって営業活動を開始しました。
営業開始前から、帯広観光連盟からは帯広と阿寒湖を結ぶ直通バス運行への強い要望が寄せられていました。しかし、道東バス設立の基となった旧事業者たちは、それぞれ個別の区間での運行が中心だったため、当初この要望には消極的でした。度重なる要望を受け、帯広乗合自動車は1952年（昭和27年）12月に帯広から上士幌、足寄を経由して阿寒湖に至るルートでの路線開設を申請します。これに道東バスは強く反発し、自社も帯広から本別、足寄を経由するルートでの直通運行を申請するという競争に発展しました。1954年（昭和29年）には両社とも運行を開始し、帯広駅の発車時刻を共に札幌からの夜行列車到着を受けた午前6時20分に設定するなど、激しい競争を繰り広げました。
1955年（昭和30年）4月1日に商号を十勝バスに変更した帯広乗合自動車とは、その後も路線申請を巡る競争が続きました。帯広市内やその周辺路線についてはその都度調整が図られましたが、例えば帯広・池田間では、道東バスが幕別経由、十勝バスが十勝川温泉経由で運行するなど、競合関係が顕著でした。また、然別湖、糠平、上士幌、足寄を経て阿寒湖へ向かう路線では、道東バスと同時の時期にバス事業を引き継いだ北海道拓殖バス（当時の北海道拓殖鉄道バス部門）を含めた3社が競願する形となりました。結果として、道東バスと十勝バスは然別湖から阿寒湖までの区間、北海道拓殖バスは然別湖から糠平までの区間の運行が認可されました。
道東バスは路線バス事業だけでなく、貸切バスの運行も行っていました。1970年（昭和45年）4月1日には、道東地域のバス事業者で組織された「東北海道観光バス手配センター」（現在の東北海道貸切バス事業協同組合の前身）に加盟するなど、事業拡大にも取り組んでいました。
昭和40年代（1965年以降）に入ると、地方における過疎化の進行やマイカーの普及（モータリゼーション）により、バス事業の経営状況は深刻な不振に陥りました。十勝地方では道東バス、十勝バス、北海道拓殖バス、そして国鉄バスがそれぞれ運行していましたが、個々の経営努力だけでは限界があり、これ以上の合理化を進めるためには民間の主要3事業者が合併すべきだという意見が強まります。1970年（昭和45年）春から合併に向けた検討が開始されましたが、北海道拓殖バスは競合する路線が少なかったため対象から外され、多くの路線で競合しており合併による合理化効果が大きいと見込まれた道東バスと十勝バスとの間で協議が進められました。1971年（昭和46年）1月30日には、存続会社を十勝バスとする対等合併が正式に発表されました。同年7月30日付で合併が認可され、1971年（昭和46年）9月6日に合併完了届が提出されたことで、道東バス株式会社は約20年にわたる歴史に静かに幕を下ろしました。
道東バスは営業開始時と合併直前とで異なる路線網を展開していました。
営業開始時の主な路線・運行系統:
路線:
糠内線（幕別村止若大通 - 幕別村糠内東2線）
本別線（池田町千代田 - 西足寄村足寄太本通1）
利別線（幕別村止若東1北1 - 池田町利別）
上足寄線（西足寄村足寄太本通1 - 足寄村上足寄原野基線）
中浦幌線（本別町基線 - 浦幌村中浦幌東2）
阿寒線（足寄村上足寄原野基線 - 舌辛村飽別阿寒湖畔）
美里別線（本別町基線 - 本別町美里別東1線）
運行系統:
止若 - 糠内
本別 - 池田
帯広 - 池田
西足寄 - 上足寄
本別 - 活平
足寄 - 阿寒湖
本別 - 西足寄
帯広 - 止若
本別 - 活込
合併時の主な路線:
駒畠線（幕別町字止若大通1-1 - 幕別町字駒畠512）
足寄線（幕別町字止若227 - 池田町字利別54-3、池田町千代田385 - 足寄町字足寄太基線77）
留真線（本別町字本別209 - 浦幌町字留真123）
美里別線（本別町基線72 - 本別町字美里別西3線131）
古舞線（幕別町札内381 - 幕別町字古舞686）
拓農線（本別町字北5-1 - 本別町字美里別東2線16-1）
陸別線（足寄町字足寄太本通1-10 - 陸別町大通1-1）
川上線（浦幌町字貴老路152 - 浦幌町字川上190）
新和線（幕別町字軍岡25 - 幕別町字新和162-21）
上陸別線（陸別町本通1-1 - 陸別町字鹿山4-2）
トマム循環線（陸別町斗満原野北3線3-11 - 陸別町斗満南3線15号91、陸別町斗満原野北3線2-4 - 陸別町斗満南3線5号91-1）
オンネトー線（足寄町字茂足寄22線登山口 - 足寄町大字螺湾村字茂足寄国有林56-1）
稲牛線（足寄町大字足寄村字足寄原野基線123-1 - 足寄町字稲牛内130）
平和線（足寄町大字足寄村字足寄原野基線23-5 - 足寄町大字足寄村原野19-2）
螺湾線（足寄町大字足寄村字上足寄原野基線9-1 - 足寄町大字足寄村字上足寄原野第2基線92-3）
大正循環線（幕別町字五位337 - 帯広市大正町字札内東4線109）
日新線（幕別町字依田76 - 幕別町字日新22）
春日団地線（幕別町札内324 - 幕別町札内297）
幕別旧線（幕別町相川463 - 幕別町相川57）
市内循環線（帯広市東2条南2-3 - 帯広市西3条南26-2）
日甜線（帯広市西2条南27-1 - 帯広市稲田町南8線5）
営林局線
* 帯里線
設立の背景と過程
1942年（昭和17年）10月12日に発令された北海道における旅客自動車運輸事業統合要綱、いわゆる戦時統合により、十勝支庁管内のバス事業者は帯広乗合自動車の傘下に統合されました。しかし終戦後、帯広乗合自動車の経営層に加わっていた旧事業者の関係者たちが、事業の再分割について議論を始めます。1946年（昭和21年）7月からは、旧事業者ごとの独立採算制が試行されました。その中で、旧小泉自動車、旧佐々木自動車、旧糠内自動車、旧止若自動車が担当していた路線、具体的には止若（現在の幕別町の一部）や池田町、足寄町方面への路線を新しい会社に引き継がせる形で、道東バス株式会社が設立される運びとなりました。1951年（昭和26年）12月28日付で分割が正式に認可され、翌1952年（昭和27年）4月1日に分割手続きが完了。これにより道東バスは、9つの運行系統と13台の車両をもって営業活動を開始しました。
事業活動と競争
営業開始前から、帯広観光連盟からは帯広と阿寒湖を結ぶ直通バス運行への強い要望が寄せられていました。しかし、道東バス設立の基となった旧事業者たちは、それぞれ個別の区間での運行が中心だったため、当初この要望には消極的でした。度重なる要望を受け、帯広乗合自動車は1952年（昭和27年）12月に帯広から上士幌、足寄を経由して阿寒湖に至るルートでの路線開設を申請します。これに道東バスは強く反発し、自社も帯広から本別、足寄を経由するルートでの直通運行を申請するという競争に発展しました。1954年（昭和29年）には両社とも運行を開始し、帯広駅の発車時刻を共に札幌からの夜行列車到着を受けた午前6時20分に設定するなど、激しい競争を繰り広げました。
1955年（昭和30年）4月1日に商号を十勝バスに変更した帯広乗合自動車とは、その後も路線申請を巡る競争が続きました。帯広市内やその周辺路線についてはその都度調整が図られましたが、例えば帯広・池田間では、道東バスが幕別経由、十勝バスが十勝川温泉経由で運行するなど、競合関係が顕著でした。また、然別湖、糠平、上士幌、足寄を経て阿寒湖へ向かう路線では、道東バスと同時の時期にバス事業を引き継いだ北海道拓殖バス（当時の北海道拓殖鉄道バス部門）を含めた3社が競願する形となりました。結果として、道東バスと十勝バスは然別湖から阿寒湖までの区間、北海道拓殖バスは然別湖から糠平までの区間の運行が認可されました。
道東バスは路線バス事業だけでなく、貸切バスの運行も行っていました。1970年（昭和45年）4月1日には、道東地域のバス事業者で組織された「東北海道観光バス手配センター」（現在の東北海道貸切バス事業協同組合の前身）に加盟するなど、事業拡大にも取り組んでいました。
合併による終焉
昭和40年代（1965年以降）に入ると、地方における過疎化の進行やマイカーの普及（モータリゼーション）により、バス事業の経営状況は深刻な不振に陥りました。十勝地方では道東バス、十勝バス、北海道拓殖バス、そして国鉄バスがそれぞれ運行していましたが、個々の経営努力だけでは限界があり、これ以上の合理化を進めるためには民間の主要3事業者が合併すべきだという意見が強まります。1970年（昭和45年）春から合併に向けた検討が開始されましたが、北海道拓殖バスは競合する路線が少なかったため対象から外され、多くの路線で競合しており合併による合理化効果が大きいと見込まれた道東バスと十勝バスとの間で協議が進められました。1971年（昭和46年）1月30日には、存続会社を十勝バスとする対等合併が正式に発表されました。同年7月30日付で合併が認可され、1971年（昭和46年）9月6日に合併完了届が提出されたことで、道東バス株式会社は約20年にわたる歴史に静かに幕を下ろしました。
かつての路線網
道東バスは営業開始時と合併直前とで異なる路線網を展開していました。
営業開始時の主な路線・運行系統:
路線:
糠内線（幕別村止若大通 - 幕別村糠内東2線）
本別線（池田町千代田 - 西足寄村足寄太本通1）
利別線（幕別村止若東1北1 - 池田町利別）
上足寄線（西足寄村足寄太本通1 - 足寄村上足寄原野基線）
中浦幌線（本別町基線 - 浦幌村中浦幌東2）
阿寒線（足寄村上足寄原野基線 - 舌辛村飽別阿寒湖畔）
美里別線（本別町基線 - 本別町美里別東1線）
運行系統:
止若 - 糠内
本別 - 池田
帯広 - 池田
西足寄 - 上足寄
本別 - 活平
足寄 - 阿寒湖
本別 - 西足寄
帯広 - 止若
本別 - 活込
合併時の主な路線:
駒畠線（幕別町字止若大通1-1 - 幕別町字駒畠512）
足寄線（幕別町字止若227 - 池田町字利別54-3、池田町千代田385 - 足寄町字足寄太基線77）
留真線（本別町字本別209 - 浦幌町字留真123）
美里別線（本別町基線72 - 本別町字美里別西3線131）
古舞線（幕別町札内381 - 幕別町字古舞686）
拓農線（本別町字北5-1 - 本別町字美里別東2線16-1）
陸別線（足寄町字足寄太本通1-10 - 陸別町大通1-1）
川上線（浦幌町字貴老路152 - 浦幌町字川上190）
新和線（幕別町字軍岡25 - 幕別町字新和162-21）
上陸別線（陸別町本通1-1 - 陸別町字鹿山4-2）
トマム循環線（陸別町斗満原野北3線3-11 - 陸別町斗満南3線15号91、陸別町斗満原野北3線2-4 - 陸別町斗満南3線5号91-1）
オンネトー線（足寄町字茂足寄22線登山口 - 足寄町大字螺湾村字茂足寄国有林56-1）
稲牛線（足寄町大字足寄村字足寄原野基線123-1 - 足寄町字稲牛内130）
平和線（足寄町大字足寄村字足寄原野基線23-5 - 足寄町大字足寄村原野19-2）
螺湾線（足寄町大字足寄村字上足寄原野基線9-1 - 足寄町大字足寄村字上足寄原野第2基線92-3）
大正循環線（幕別町字五位337 - 帯広市大正町字札内東4線109）
日新線（幕別町字依田76 - 幕別町字日新22）
春日団地線（幕別町札内324 - 幕別町札内297）
幕別旧線（幕別町相川463 - 幕別町相川57）
市内循環線（帯広市東2条南2-3 - 帯広市西3条南26-2）
日甜線（帯広市西2条南27-1 - 帯広市稲田町南8線5）
営林局線
* 帯里線
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