十勝バス

北海道帯広市に本社を構える十勝バス株式会社は、バス事業を中心とした多角的な事業を展開しています。地域に根差した公共交通機関として、帯広市およびその周辺地域を結ぶ路線バス、とかち帯広空港への連絡バス、さらには札幌市や旭川市といった主要都市への都市間バス、そして貸切バスの運行を主力としています。

沿革と歴史

十勝バスの起源は、滋賀県から帯広に移住した創業者が、雑貨商や新聞の紙問屋を営んだ後にバス事業に着手したこととされます。これが前身である十勝自動車の設立（大正5年、1916年）へと繋がりました。戦時下の事業統合により帯広乗合自動車となりますが、戦後、路線の譲渡などを経て、昭和30年（1955年）に現在の十勝バス株式会社に社名を変更しました。その後も、道東バスとの合併（昭和46年、1971年）や、国鉄広尾線・士幌線（昭和62年、1987年）、北海道ちほく高原鉄道（2006年）といった鉄道廃止に伴う代替バス路線の運行を引き受けるなど、時代の変化に応じて事業を拡充・再編しています。また、近年ではヤマト運輸との連携による「客貨混載」の開始（2016年）や、バーコード決済（PayPay、d払い、au Payなど）の導入（2020年）といった新たな取り組みも積極的に行っています。

経営再建と地域貢献

一時期は乗客の減少により経営的に厳しい局面に立たされましたが、積極的な時刻表の配布など、利用者目線に立った経営改善策を推進しました。その結果、2011年度には40年ぶりの増収を達成するなど、見事な経営再建を果たしました。この再生の軌跡は、『黄色いバスの奇跡十勝バスの再生物語』として書籍化され、さらにTEAM NACSの森崎博之氏主演でミュージカル「KACHI BUS」としても上演されるなど、広く注目を集めました。徹底した利用者視点での経営再建とその成果は高く評価され、2020年には「地域の足」を守り抜いた功績により、第74回北海道新聞文化賞を受賞しています。

事業内容

路線バス

帯広駅前を中心とした市内循環線や、主要な地域・施設を結ぶ一般路線を運行しています。特に、鉄道廃止区間を引き継いだ帯広・陸別線や広尾線は、地域の幹線として重要な役割を担っています。また、札幌方面への都市間バス「ポテトライナー」や旭川方面への「ノースライナー」は、他社との共同運行により北海道の主要都市間を結んでいます。とかち帯広空港への連絡バスも運行し、空路利用者への利便性を提供しています。スクールバスの運行や、音更町、幕別町のコミュニティバス運行を受託するなど、自治体とも連携して地域住民の移動を支えています。

かつてはより広範囲な長距離路線や、各町内のローカル路線も多数運行していましたが、過疎化やモータリゼーションの進展など時代の変化により、多くが廃止や運行形態の変更に至っています。

貸切バス

観光、研修、送迎など、多様なニーズに対応する貸切バス事業も展開しています。貸切バス事業者安全性評価認定制度において優良事業者に認定されており、北海道全域での営業が認められています。

その他の事業

近年では、地域の高齢化や少子化に対応するため、介護事業（十勝バス介護サービスセンター）や、保育・教育事業（アフタースクールかちばす）にも進出し、多角的な視点から地域社会に貢献しています。

事業所

本社および帯広営業所を帯広市内に置き、広尾や千歳にも営業所を有しています。また、帯広駅や空港、道の駅などに案内所を設置し、利用者の利便を図っています。

車両

保有車両は日野自動車製が中心です。路線バス車両は100台以上を保有しており、かつては首都圏からの移籍車両も多く導入されていました。車両を長期にわたり大切に使用することで知られ、近年までモノコックボディの旧型車両も活躍していました。現在の路線バス車両は、黄色を基調としたシンプルな「TOKACHIBUS」ロゴ入りのデザインが標準となっています。鉄道代替バス路線には独自の塗装が採用されています。方向幕のLED化なども進められています。

乗車券と決済

窓口では各種乗車券を取り扱っており、一部の窓口では「愛国から幸福ゆき」の記念硬券も販売しています。交通系ICカードには対応していませんが、一部路線でのWAON決済や、多くの路線バス車内および窓口でのPayPayをはじめとする多様なQRコード決済に対応しており、利用者の利便向上に努めています。

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