道深法親王

道深法親王：皇室と仏教界の狭間で生きた皇子

道深法親王（どうしんほうしんのう、1206年 - 1249年）は、鎌倉時代前期に生きた皇族です。後高倉院（守貞親王）の第二皇子として生まれ、母は北白河院（持明院陳子）でした。後堀河天皇にとっては実兄にあたり、金剛定院御室と称されました。

出家と東大寺での修行

1216年、道深法親王は仁和寺で出家し、東大寺で受戒した後、東南院に入って修行を積みました。しかし、承久の乱の影響で、仏教界でも後鳥羽院関係者への処分が行われ、次期御室に内定していた尊覚法親王が仁和寺を追われるという事態が発生しました。

御室への就任

一方、道深法親王は皇室の傍流出身でしたが、弟の後堀河天皇の即位と父の後高倉院の院政開始により、状況が一変します。天皇の近親が就くべきとされた次期御室に迎えられることになったのです。1221年、道深法親王は兄の尊性と共に法親王となり、東大寺から仁和寺に移されました。

東南院院主を巡る騒動

東大寺では、東南院の院主は真言宗と三論宗を兼学し、常住することが要件とされていました。そのため、道深法親王が御室を継ぐのであれば、東南院院主は辞退すべきとの意見が高まりました。後高倉院は土御門通親の子である定親を新しい院主にしようとしましたが、定範の死後、彼が生前に道深法親王に東南院を継がせたいという意志を示した証文が発見されたことで、事態は複雑化します。

東大寺側は定親への継承を主張しましたが、北白河院が後堀河天皇に働きかけ、道深法親王を院主にすることを決定させました。これに対し、東大寺の衆徒は強訴を起こし、興福寺の衆徒も合流する事態に発展しました。最終的には、道深法親王が院主を辞退することで事態は収拾されましたが、この騒動は皇室と仏教界の権力争いを浮き彫りにしました。

伝法灌頂を巡る対立

次期御室となった道深法親王は、早期の伝法灌頂を希望しましたが、当時の仁和寺の規定では、師匠となる僧侶の年齢が50歳以上であることが原則でした。道助法親王は当時31歳であったため、この要求を拒否しましたが、北白河院の強い意向を受け、最終的に伝法灌頂が行われました。その後、道助法親王は道深法親王に御室の地位を譲り、高野山に蟄居することになりました。

後高倉院皇統の終焉と道深法親王の死

道深法親王は、父の後高倉院、弟の後堀河天皇、母の北白河院、兄の尊性を相次いで亡くし、後高倉院の皇統最後の男子となりました。彼は既に九条道家の子の法助を後継者に指名しており、その育成に尽力しました。1249年、道深法親王は44歳で病死しました。

道深法親王の生涯は、皇室と仏教界の複雑な関係の中で翻弄されたものでした。政治的な駆け引きと宗教的な権威の間で、彼は自らの道を模索し続けたのです。彼の死後、後高倉院の皇統は断絶しましたが、その足跡は歴史に深く刻まれています。

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