道隠

道隠（どうおん）について

道隠（1741年 - 1813年）は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した浄土真宗本願寺派の学僧であり、法名は諦忍、字は道隠、号は薩州、院号は浄信院です。彼は、特にその教義を巡る論争や宗門内の抗争において名を馳せました。道隠は北九州・薩摩国に生まれ、若い頃は河内国にある西念寺に住みましたが、晩年は豊前国の長久寺、現在の大分県中津市に移りました。

彼は僧樸や僧鎔といった著名な先師から教えを受け、空華学派の重要な学者として知られています。この流派は、道隠を含めて「空華三師」と呼ばれる三人の代表的な学匠を置いており、他の二人は僧鎔と柔遠です。彼の教えは、古義派の論客として特に評価されています。

道隠が特に注目を集めたのは、教義の対立によって引き起こされた「三業惑乱」と呼ばれる大紛争です。彼は安芸国の大瀛と共に古義派を代表し、西本願寺の能化である智洞が提唱する三業帰命説を批判しました。この教義論争は単なる学問の領域を超え、実際に流血を伴う宗教争いや社会的な混乱を引き起こしました。門主や宗門はこの事態の収拾に苦労し、最終的には江戸幕府から介入を受ける結果となりました。

具体的な対立の場面としては、1803年に二条城で行われた対論や、1804年に江戸の寺社奉行所での議論があります。これらの場で彼は智洞を論破し、道隠と大瀛の主張が公に認められることとなりました。

しかし、1806年には、寺社奉行の脇坂安董が三業帰命説を異安心（非正統的な教義）と判定しました。この判断により、道隠や大瀛の主張が公に追認されることになり、本願寺の門主である本如もこれを承認しました。しかし同年の7月には、三業惑乱による社会的混乱を受けて、道隠は退隠を強いられました。

道隠の功績に関しては、彼の著作も重要です。彼は『教行信証略讃』などを執筆しており、これらの作品は浄土真宗の教義を深く掘り下げ、その理解を広めるための基盤を築くものでした。

道隠の思想や活動は、浄土真宗の発展に寄与し、彼が引き起こした論争は宗教史において重要な意味を持っています。その教えや論理は今日に至るまで研究の対象となっており、道隠の存在は浄土真宗における重要な学者の一人として記憶されています。

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