遠里小野

大阪市住吉区遠里小野：菜種油発祥の地と歴史の交差点

古来より油の産地として知られ、日本で初めて菜種油の生産が行われた地として名高い、大阪市住吉区遠里小野。その歴史は古く、古代の律令制成立以前から記録が残されており、万葉集にも「とほさとをの」として詠まれています。地名についても諸説あり、「ハリのオヌ」や「ウリノ」といった名称が変化したとする説や、南北朝時代の「瓜生野の合戦」に由来する説など、歴史の深みを感じさせます。

古代から中世の遠里小野：漁村から農村へ

発掘調査で出土した大量の漁具から、古代の遠里小野は漁村であったことが示唆されています。当時、海岸線は現在よりも東に位置し、墨江津と呼ばれる港が開かれていたと推測されています。難波京と和泉国府を結ぶ南海道の交通・物流拠点としての役割も担っていたと考えられています。中世以降は熊野街道が通り、農村として栄えました。現在、あべの筋が旧集落を避けるように通っているのは、この歴史を反映していると言えるでしょう。

菜種油発祥の地：ハシバミ油から菜種油へ

遠里小野は、古くからハシバミの搾油が行われ、朝廷の祭祀にも用いられる油を生産していました。しかし、山崎（現在の京都府乙訓郡大山崎町付近）で生産されたエゴマ油の台頭により、競争力を失いかけた遠里小野は、油分の多い菜種に着目。搾油道具の改良と相まって、菜種油生産で再び成功を収め、中世・戦国時代から平和な時代へと移り変わる中で需要が増大し、村は大きく発展しました。

大和川の付け替えと町名の変遷：分断と再統合

1704年（宝永元年）、大和川の付け替え工事により、遠里小野村は二分されました。この工事は、度重なる大和川の氾濫を防ぐための抜本的な対策でしたが、村を分断するという結果を招きました。現在、両地区は「遠里小野橋」で結ばれています。

明治時代以降は、町村制施行、大阪市編入、住居表示変更など、幾多の変遷を経て現在の遠里小野となりました。1871年（明治4年）には大和川以南が和泉国大鳥郡遠里小野村として分離され、現在も堺市堺区にその名残が残っています。1930年（昭和5年）の遠里小野橋架橋、1981年（昭和56年）の現行住居表示実施など、近現代の歴史も、遠里小野の変遷を物語っています。

交通と文化：鉄道唱歌と現代の生活

鉄道唱歌には、「遠里小野の夕あらし」と歌われ、歴史と情緒を感じさせます。南海高野線我孫子前駅が最寄りの駅であり、あべの筋（大阪府道30号大阪和泉泉南線）などの主要道路が通る交通の要衝です。大阪シティバスの停留所名「おりおの橋」からも、親しみのある地名が現代に受け継がれていることが分かります。

現在も、遠里小野小学校、大和川中学校などの学校や、公園、公共施設などが整備され、活気ある街並みが広がっています。かつての漁村、農村、そして菜種油の生産地としての歴史を刻みながら、現代に息づく遠里小野は、歴史と文化、そして現代社会が融合した魅力的な地域と言えるでしょう。

もう一度検索