遣渤海使

遣渤海使（けんぼっかいし）とは

遣渤海使とは、渤海国からの使節の来訪を受けて、日本が渤海国へ派遣した使節のことです。記録に残る限り、728年から811年の間に14回（または720年から15回。このうち759年は渤海経由の遣唐使。このほか787年、操舵手等の派遣が1回）の使節が派遣されました。

背景

『続日本紀』によると、720年に渡嶋津軽津司の諸君鞍男ら6人が風俗視察のため靺鞨国へ派遣されたとあります。この靺鞨国については、北海道北部の粛慎を指すとする説と、渤海を指すとする説があり、定説は確立していません。後者の説によれば、720年の遣使が渤海からの使節来訪の契機になったと考えられます。

渤海は698年に高王によって建国されましたが、武王の時代になると唐や新羅と対立するようになり、これらの国々を牽制するために日本への使節派遣を計画しました。渤海からの使節団は、現在のロシア沿海地方ポシェト湾近くのクラスキノ土城（塩州城）から日本へ向かったとされています。

727年秋、渤海からの使節一行は出羽に到着し、翌728年正月に朝貢し国書を献上しました。当時、唐との関係が困難だった渤海は、日本へ接近を試み、一方日本側も渤海の来朝を歓迎し、使節を厚遇しました。この時、日本は渤海を、かつて存在した高句麗の後継国家と捉えていました。この728年の使節派遣が、一般的に最初の遣渤海使とされています。

新羅との関係と交流の変化

758年から763年の間、新羅との関係が特に緊張していた時期には、ほぼ毎年使者が往来しました。759年には、恵美押勝が渤海の要請とも言われる大規模な新羅遠征計画を立てましたが、孝謙上皇との不和や渤海側の事情の変化により中止されました。文王の時代になると、渤海は唐との融和政策に転じ、両国間の交流は軍事的な意味合いを薄め、文化交流と経済活動が中心となりました。

渤海との交流は朝貢貿易の形態を取り、日本は渤海からの虎の皮などの貢物に対し、数倍の回賜で応える必要がありました。このため、渤海側は大きな利益を得た一方、日本側の財政は圧迫されました。使節の接待や回賜にかかる費用が無視できない規模になると、日本は使節の来朝を制限し、日本からの派遣も中断しました。しかし、渤海側からの使節派遣は渤海が滅亡するまで継続しました。

遣渤海使の構成

『延喜式』大蔵省式によると、遣渤海使の一行は、大使、判官、録事、訳語、主神、医師、陰陽師、史生、船師、射手、卜部、雑使、船工、柂師、傔人、挟杪、水手から構成されていました。

遣渤海使一覧

13回説では第4回を除き、15回説では787年（又は720年）を含みます。

参考文献

上田雄 『渤海国の謎-知られざる東アジアの古代王国-』講談社＜現代新書＞、1992年、ISBN 4061491040
関口明 「渡嶋蝦夷と粛慎・渤海」『日本古代の伝承と東アジア』　吉川弘文館、1995年、ISBN 464202283X
吉田孝『日本の誕生』岩波書店、1997年、ISBN 4004305101
田村晃一 『論集:沿海州渤海古城クラスキノ古城の機能と性格』青山学院大学クラスキノ土城発掘調査団・ロシア科学アカデミー極東支部歴史考古民族学研究所（2013年）

関連項目

渤海使
遣唐使
遣新羅使
遣耽羅使

外部リンク

『福井県史』通史編1　原始・古代
石井正敏「『続日本紀』養老四年条の「靺鞨国」－靺鞨国＝渤海説の検討－」『アジア遊学3巻』　勉誠出版、1999年

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