郷長

郷長（ごうちょう）とは

郷長とは、古代日本の律令制度において、地方行政の末端組織である「郷（ごう）」を統括した官職です。郷は、それ以前の「里（さと）」が改名されたものであり、それに伴い、里の長であった里長（さとおさ/りちょう）も郷長と呼ばれるようになりました。

郷長の職務と役割

郷長は、郡司（ぐんじ）の指揮下に入り、主に以下の職務を担っていました。

税の取り立て: 租税を徴収し、国に納める役割を担いました。
出挙（すいこ）の管理: 稲などの穀物を貸し付け、利息をつけて返済させる出挙の管理を行いました。
地域住民の把握: 郷に住む人々の情報を把握し、管理しました。

郷長は、その土地の有力な農民から選ばれることが多く、その見返りとして、庸（よう）や雑徭（ぞうよう）といった税や労役が免除される特権が与えられていました。

郷長という名称の由来

奈良時代初期の霊亀元年（715年）に、地方行政区画の名称が里から郷へと改められた際、里長も郷長へと名称が変更されました。また、郷は原則として50戸で構成されていたため、「五十戸長（さとおさ）」と書いて「さとおさ」と読ませることもありました（『万葉集』巻5）。

郷長の衰退

郷長は、平安時代初期までは土地の売買証文などに署名する姿が見られましたが、10世紀から11世紀にかけて国衙（こくが）機構が再編される中で、その多くが姿を消していきました。伊勢神郡など、一部の地域でのみ例外的に残存しました。

参考文献

米沢康「郷長」『国史大辞典 5』（吉川弘文館 1985年） ISBN 978-4-642-00505-0
原秀三郎「郷長」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年） ISBN 978-4-582-13103-1
中野栄夫「郷長」『平安時代史事典』（角川書店 1994年） ISBN 978-4-04-031700-7
* 小林昌二「郷長」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年） ISBN 978-4-09-523002-3

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