鄧力群

鄧力群：中国共産党保守派の理論家、激動の時代の生き証人

鄧力群（1915年11月27日 - 2015年2月10日）は、20世紀後半の中華人民共和国を代表する政治家の一人です。彼は特に1980年代、保守派の理論家として党内において大きな影響力を持つ一方、改革派との激しい権力闘争の中心にいました。その波乱に満ちた生涯は、激動の時代を生き抜いた証として、中国共産党史において重要な位置を占めています。

初期の経歴と文化大革命

鄧力群は1936年、北京大学に入学し、学生運動のリーダーとして活動、その後中国共産党および中国共産主義青年団に入党しました。建国後は、新疆ウイグル自治区で要職を歴任し、党の宣伝工作にも携わりました。文化大革命期には、陳伯達から「現行反革命」と非難され、幹部学校での審査を受けるなど、厳しい時期を経験しました。しかし、1974年に復権し、翌年には国務院に新設された「政治研究室」の責任者に就任するなど、急速に地位を回復させていきます。

改革開放期における権力闘争

1978年、鄧力群は中国社会科学院副院長、党中央弁公庁副主任、中央書記処書記研究室主任などを歴任。1982年には中央宣伝部長に就任しました。この時期は中国が改革開放政策を進める一方、保守派と改革派の対立が激化する時代でした。鄧力群は保守派の中核として、改革派の勢力拡大を牽制しようとしました。

特に1983年の「反精神汚染キャンペーン」では、人道主義を支持した胡績偉人民日報社長を解任に追い込むなど、保守派を主導しました。1987年の民主生活会では、胡耀邦総書記の指導を批判し、ブルジョア自由化の蔓延を糾弾、胡耀邦の責任を問う強い発言を行いました。さらに、胡耀邦に近い朱厚沢中央宣伝部長の解任にも関与し、保守派の王忍之を後任に据えました。

胡耀邦失脚と鄧力群の失墜

胡耀邦の失脚後、保守派のトップである陳雲は、鄧力群を総書記に据えることを期待しました。しかし、李鋭中央組織部副部長と鮑彤は、鄧小平に鄧力群が改革開放に反対する極左主義者であり、かつ過去の私的な問題を暴露しました。この情報を受け取った鄧小平は、鄧力群を全ての職務から解任し、政治局委員から政治局候補委員に格下げしました。さらに、中央委員の選挙にも落選、中央顧問委員会常務委員の選挙にも落選し、事実上政治の表舞台から姿を消しました。

晩年と死去

その後、鄧力群は表立った政治活動を行うことはありませんでしたが、趙紫陽失脚後には、自著の中で溜飲が下がったことを記しています。2015年2月10日、北京で99歳で死去しました。

鄧力群の生涯と歴史的意義

鄧力群の生涯は、中国共産党内における保守派と改革派の激しい対立、そして権力闘争の激しさを見事に反映しています。彼の言動は、中国の政治的転換期における複雑な力学関係を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。彼の存在は、改革開放政策が進む中で、保守派勢力の存在と影響力を示す象徴的な存在と言えるでしょう。また、彼の経験は、中国共産党の内部抗争の様相を理解する上で貴重な歴史的資料となります。彼の没後も、彼の政治的立場や行動は、中国現代史研究において議論の的となるでしょう。

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