鄧至

鄧至（とうし）は、南北朝時代に現在の中国四川省北部に存在した、羌族による政権です。鄧至羌、または白水羌とも呼ばれていました。仇池の西、宕昌の南という位置関係にあり、都は鄧至城（現在の四川省九寨溝県の西）に置かれていました。首長の姓は「像」氏です。

成立と北魏への朝貢

鄧至の建国者は、白水酋帥であった像舒治（しょう しょじ）です。彼は自ら王を称し、北魏の孝文帝に使者を派遣して、龍驤将軍・鄧至王に封じられました。これが鄧至の初代とされています。

南朝との関係

鄧至は、南朝に対しては代々、持節・平北将軍・西涼州刺史といった称号を自称していました。502年には、像舒彭（しょう しょほう）が南朝梁に使者を送り、都督西涼州諸軍事・安北将軍の位を受けています。

滅亡

554年、像檐桁（しょう えんこう）が政権を失い、西魏に亡命しました。宇文泰は、章武公宇文導に兵を率いさせて像檐桁を護送し、復位させました。しかし、その後の鄧至に関する記録は史料には残されていません。北周が西魏に取って代わった後、その地に鄧州が立てられていることから、遅くともこの頃には鄧至は滅亡していたと考えられています。

鄧至の君主

像舒治（しょう しょじ）：430年 - ?
像舒者（しょう しょしゃ）
像屈耽（しょう くつたん）
以後三代の世系は不明
像舒彭（しょう しょほう）：502年 - 509年
像覧蹄（しょう らんてい）：509年 - ?
以後二代の世系は不明
像檐桁（しょう えんこう）：? - 554年

参考資料

『魏書』巻101 列伝第89
『梁書』巻54 列伝第48 諸夷
* 『周書』巻49 列伝第41 異域上

鄧至は、短期間ながらも独自の歴史を刻んだ政権であり、その存在は中国史における少数民族の活動を知る上で重要な手がかりとなります。

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