鄭楹

鄭楹について

鄭楹（てい えい、チン・ゾアン）は、保泰元年（1720年）11月5日に生まれ、景興28年（1767年）1月5日に亡くなった、後黎朝大越の著名な権臣であり、東京鄭氏の第9代当主です。彼の封号は明都王であり、鄭氏の歴史において重要な役割を果たしました。

生涯と家族背景

鄭楹は安都王鄭棡の四男として誕生しました。兄にあたる威南王鄭杠は、その性格から暴政を敷き、政務をおろそかにし、民衆からの不満を招いていました。永佑6年（1740年）、後黎朝の家臣たち、阮貴憼や阮公寀、武公宰たちは、鄭杠の母に当たる武氏玉源の支援を受けて、彼を廃し、同母の弟である鄭楹を新たに推挙しました。

鄭楹の治世

鄭楹が当主に就任すると、彼は早速、北河の民衆による武装蜂起に直面しました。この蜂起は、鄭杠の暴政に対する反発から生まれ、裕宗の子である黎維礻密や将軍たちが立ち上がるきっかけとなりました。歴史的には「北河の農民蜂起」として知られるこの運動には、名将たちが加わり、鄭楹自身も出征して鎮圧にあたりました。その結果、鄭氏の統治は安定し、彼は民衆からの支持を得るに至りました。

さらに、彼は歴代の鄭氏当主の中でも異例であり、皇帝であった顕宗を深く尊重する姿勢を持っていました。彼は群臣から与えられた尊号を僭越と考え、これを受け入れようとはしませんでした。これにより、彼は自身の権力と民衆の信任を損なうことなく、統治を続けられました。

死去と遺志

景興28年（1767年）1月5日に鄭楹は死去し、次男の鄭森がその地位を引き継ぎました。彼の死後、鄭楹には「毅祖」の廟号が追贈され、「恩王」としても称されていました。彼の治世は、暴政からの脱却と民意を反映した統治の新しい形を模索する試みとして評価されています。

参考文献

• - 石井米雄、桜井由躬雄編 『東南アジア史 I 大陸部』 山川出版社 1999年
• - 陳仲金 『ベトナム史略』

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