鄭泰

鄭泰（てい たい）

鄭泰は、後漢末期の混乱期を生きた政治家です。彼の生涯は、董卓の専横に対する抵抗と、時代の波に翻弄される姿を浮き彫りにしています。

生涯

司隷河南郡開封県（現在の河南省開封市一帯）に生まれた鄭泰は、名門の家柄でした。高祖父は鄭衆、曾祖父は鄭安世と、代々高位の官僚を輩出しています。父は鄭熙、弟は鄭渾、そして子に鄭袤がいます。鄭泰自身も、尚書侍郎、奉車都尉、議郎、揚州刺史といった官職を歴任しました。

人物評として、鄭泰は計略に優れた人物として知られていました。その才能を見込まれ、何進に招聘され側近として仕えることになります。この頃から、鄭泰は政治の動乱を敏感に察知していました。

董卓が都に兵を率いて現れると、その危険性を誰よりも早く見抜きます。何進に対し、董卓と手を結ぶことの危険性を訴えましたが、彼の進言は受け入れられませんでした。結果として、何進は暗殺され、董卓が実権を握るという事態を招きます。

董卓が権力を掌握すると、鄭泰は表面上は彼に忠実な態度を取りつつ、密かに董卓打倒の機会を窺います。まず、董卓によって追われた袁紹を赦免させ、勃海太守に任命させました。これは、袁紹を反董卓の旗頭として担ぎ出すための布石でした。

反董卓連合軍が結成されると、鄭泰は董卓に対し、関東の諸侯の情報を伝え、自らに軍勢を率いて討伐することを願い出ます。しかし、董卓は鄭泰の真意を警戒し、軍権を与えることはありませんでした。長安遷都の際にはそれに同行しますが、荀攸や何顒と共謀し、董卓暗殺を計画します。しかし、この計画は事前に発覚してしまいます。荀攸らは投獄されますが、鄭泰はなぜか難を逃れています。

董卓が暗殺されると、今度は李傕が長安に攻め込んできます。鄭泰は武関を通り、袁術の下へ逃れました。袁術は彼を揚州刺史に任命しますが、任地へ向かう途中で病に倒れ、41歳という若さで亡くなりました。

家族

弟の鄭渾は、兄とは対照的に袁術の下を離れ、曹操に仕え数々の功績を挙げました。その活躍は『三国志』魏書に記録されています。

評価

鄭泰は、時代の流れに翻弄されながらも、信念を貫き通そうとした人物でした。董卓の専横を阻止しようとした彼の行動は、結果として失敗に終わりましたが、その志は後世に語り継がれています。

参考文献

『後漢書』鄭太伝 （注：『後漢書』では、作者の范曄が父の范泰の名を避諱したため、「泰」ではなく「太」の字が用いられています）
『三国志』魏書鄭渾伝

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