袁術

袁術（えん じゅつ）

袁術は、後漢末期の武将であり政治家です。字は公路といい、名門袁氏の出身でした。当初は官界に身を置いていましたが、董卓の動乱を機に群雄の一人として台頭しました。

生涯

御曹司から諸侯へ

袁術は若い頃、豪奢な生活を送っていましたが、後に改心しました。同族の袁紹に対して嫉妬心を抱き、その出自を中傷することもあったようです。孝廉に推挙され、郎中から河南尹、折衝校尉、虎賁中郎将と官位を重ねました。

霊帝の崩御後、宦官粛清に加わったものの、董卓の入京後は一時董卓に従いましたが、後に南陽へ逃れました。そこで孫堅を配下に置き、董卓討伐に乗り出しました。南陽郡は豊かでしたが、袁術は奢侈な生活を続け、民衆を苦しめました。

二大勢力

献帝擁立を巡り、袁術は袁紹と対立しました。袁術は漢室の存続に疑問を抱いており、劉虞の擁立に反対しました。公孫瓚が袁術に協力した一方で、袁紹は劉表と同盟を結び、袁術との対立は深まりました。孫堅を失い、曹操との戦いに敗れると、袁術は揚州へと逃れ、勢力を再構築しました。しかし、その勢力は徐々に衰退していきました。

徐州侵攻

袁術は徐州の陶謙と対立し、徐州を支配しようとしました。陶謙の死後、劉備が徐州刺史となると、袁術は劉備を討とうとしました。呂布を味方に引き入れようとしたり、紀霊を派遣して劉備を攻撃させようとしたりしましたが、呂布の裏切りなどにより失敗に終わりました。孫策は袁術から独立し、袁術の勢力はさらに弱まりました。

皇帝即位

袁術は、献帝の没落を機に皇帝になる野心を抱きました。側近の進言により、寿春を都とし、国号を「仲」として皇帝に即位しました。しかし、この僭称は諸侯から承認されず、袁術自身も奢侈な生活を続けたため、民衆の反発を招きました。さらに、孫策も袁術から離反しました。

最期

袁術は劣勢の中、呂布と再び同盟を結びましたが、呂布は曹操に滅ぼされました。袁術は袁紹に庇護を求めようとしましたが、病に倒れ、失意の内に亡くなりました。その最期は、蜂蜜入りの飲み物を求めるも得られず、吐血して絶命するという悲惨なものでした。

逸話

袁術は、18歳から蜂蜜入りの乳粥を常食するほどの奢侈家でした。また、長水校尉になった際には、豪華な馬車に乗って傲慢な振る舞いをしていたため、「路中捍鬼袁長水」と揶揄されたという逸話が残っています。

子孫

袁術の死後、従弟の袁胤が軍を引き継ぎました。袁術の妻と子女は孫策に保護され、娘は後に孫権の側室となり、息子は呉に仕官しました。袁術の血筋は、呉において繋がれていきました。

『三国志演義』における袁術

小説『三国志演義』では、袁術は董卓討伐の諸侯の一人として登場し、その傲慢さと短慮さが強調されています。孫堅の功績を妬んで兵糧を出し惜しみし、劉備を侮辱するなど、負の側面が強く描かれています。皇帝を僭称するも、曹操や呂布に敗れて滅亡するという、悲劇的な人物として描かれています。

関連人物

親族

袁湯（祖父）
袁逢（父）
袁基（同母兄）
袁紹（異母兄か従兄）
袁遺（従兄）
袁胤（従弟）
馮方女（側室）
袁燿（子）
袁夫人（娘）
孫権（娘婿）
孫奮（孫婿）
黄猗（女婿）
楊彪（叔母婿）
楊修（従弟）

配下

紀霊
張勲
橋蕤
韓胤
楊奉
韓暹
雷薄
陳蘭

『三国志演義』でのみの配下

兪渉

参考資料

『三国志』
* 『後漢書』

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