鄭謙

鄭謙（てい けん）

鄭謙は、中華民国初期に活躍した政治家であり、軍人でもありました。字は鳴之といい、北京政府や奉天派において重要な役割を担った人物です。

生涯

鄭謙は、日本に留学し、法政大学を卒業しました。帰国後、彼は官界に入り、雲貴総督署参事、憲政籌備処参事、安徽国税庁籌備処坐弁、皖北税務局局長など、様々な役職を歴任しました。これらの経験を通じて、彼は行政官としての能力を磨いていきました。

1917年6月、鄭謙は黒竜江督署秘書長に就任しました。同年11月には同省政務庁庁長に異動し、その行政手腕を発揮しました。1920年には、北京政府陸軍部参事に任命され、中央政府においてもその存在感を示しました。1922年、鄭謙は奉天派の指導者である張作霖の下で東三省保安司令部秘書長に就任し、奉天派の中枢で活躍しました。

1925年2月、鄭謙は江蘇省省長に任命され、8月には一時的に江蘇督弁を兼任しました。しかし、まもなく楊宇霆が江蘇督弁となり、鄭謙は省長専任となりました。その後、直隷派の孫伝芳が勢力を拡大し、楊宇霆が敗北すると、鄭謙も同年12月に辞任を余儀なくされました。これは、当時の政治情勢が非常に不安定であったことを示しています。

1926年、鄭謙は顔恵慶内閣で内務総長に任命されましたが、実際には就任しませんでした。その後、安国軍司令部秘書長に任命され、張作霖の補佐役として活動しました。張作霖が爆殺された後、張学良が後継者となると、鄭謙は1928年7月まで東北保安司令部秘書長を引き続き務めました。これは、彼が張氏父子から厚い信頼を得ていたことを示しています。

1929年1月28日、鄭謙は瀋陽で病没しました。享年54歳でした。彼の死は、中華民国初期の政治史における一つの時代の終わりを告げるものでした。

業績

鄭謙は、北京政府や奉天派において、行政官、官僚として重要な役割を果たしました。彼の業績は、当時の複雑な政治情勢の中で、いかに官僚が権力構造を維持し、安定した行政運営を支えていたかを示す好例と言えるでしょう。また、奉天派における彼の貢献は、張作霖、張学良父子の政権運営に大きく寄与しました。

鄭謙の生涯は、中華民国初期の政治と軍事の混乱期を生き抜いた官僚の典型例であり、彼の足跡は、この時代の政治史を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献

徐友春主編『民国人物大辞典 増訂版』河北人民出版社、2007年。ISBN 978-7-202-03014-1。
劉寿林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年。ISBN 7-101-01320-1。

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