鄭麗君

鄭麗君（チェン・リーチュン）は、台湾の民主進歩党に所属する政治家で、行政院副院長を務めています。彼女のキャリアは、学生時代の社会運動から始まり、立法委員、文化部長を経て現在の地位に至ります。彼女は一貫して、社会正義、人権、そして文化振興に尽力してきました。

学生時代と社会運動

鄭麗君は、台北市立第一女子高級中学を経て、国立台湾大学哲学系に進学しました。学生時代から反骨精神が旺盛で、高校時代には国慶活動のボイコットを企画したり、大学時代には三月学運に参加したり、万年国会の解散を求めてハンガーストライキを行うなど、積極的に社会運動に関わりました。また、台湾大学在学中には布袋戲サークル「台大掌中劇団」を創設し、サークル長を務めたほか、政治系サークル「大陸社」にも参加し、後の政治家たちとの交流を深めました。

大学卒業後はフランスに留学し、フランス国立社会科学高等研究院とパリ・ナンテール大学で修士号を取得しました。留学中には、在仏の台湾大学卒業生グループ「留法台湾同学会」を設立し、会長を務めました。また、チベット独立運動に参加し、中国大使館に抗議活動を行ったこともあります。

政治キャリア

2001年から2004年まで、民進党系のシンクタンクである台湾智庫で弁公室主任を務めました。2004年には、34歳という若さで行政院青年輔導委員会主任委員に就任し、陳水扁政権で最年少の閣僚となりました。その後、2012年から2016年まで立法委員を2期務め、2016年には文化部長に就任しました。

文化部長として、鄭麗君は台湾の文化政策に大きな変革をもたらしました。白色テロを記憶に留めるための国家人権博物館や、慰安婦の記録を展示する阿嬤の家 平和と女性人権館の開館に尽力し、人権教育の強化を推進しました。また、台湾の固有コンテンツ育成や歴史的文脈を持つ文化資産の保護と活用にも力を入れ、図書館での貸し出し頻度に応じて著作権者に収入を分配する公共貸与権を導入しました。これにより、台湾は東アジアで初めて同権を実現した国となりました。

政策と主張

鄭麗君は、2008年の総統選挙で謝長廷陣営の青年部主任として選挙運動に関わり、台湾最南端から台北まで徒歩で縦断する「逆風行脚」を行いました。この経験を通じて、彼女は机上の空論ではなく、土地と人々の生活に根ざした政治の重要性を認識しました。この経験は、後の彼女の政策立案に大きな影響を与えました。

また、彼女は脱原発を支持し、原発稼働を撤回しない馬英九政権を批判しました。立法委員としては、集会遊行法の改正に取り組み、集会・結社の自由を保障するための法改正を主導しました。さらに、歴史教科書改訂問題では、教科書が特定の党の業績を宣伝するものではないと主張し、修正を求めました。

文化部長としての活動

文化部長としての鄭麗君は、文化部の予算拡大に尽力し、2018年には公的予算が200億NT$を超えました。また、文化資産保存法の改正を主導し、文化資産の保護を強化しました。さらに、文化内容策進院（文策院）を設立し、文化産業の振興を図りました。文策院は、アニメ、漫画、ゲームなどのコンテンツ産業を支援し、台湾の文化産業の国際競争力向上を目指しています。また、台北機廠の全域保存と鉄道博物館構想を推進し、歴史的な文化遺産の保護にも尽力しました。

評価と影響

鄭麗君の文化部長としての実績は高く評価されており、業界関係者や文化人からの支持も厚いです。彼女は、文化政策を「文化を治める」のではなく、「文化で治める」ことを使命とし、文化の民主化、台湾の固有コンテンツの育成、そして歴史的文脈を持つ文化資産の保護と活用を推進しました。また、多くの重要法案を可決に導き、台湾の文化政策に大きな影響を与えました。

彼女の退任後も、その実績は高く評価され、次期文化部長は「麗君障礙/障害」と呼ばれるほど、彼女の業績と比較されることが避けられないと言われています。彼女の政策は台湾の文化政策に大きな変革をもたらし、多くの人々に支持されています。

鄭麗君の活躍は、台湾の文化の発展に欠かせないものとなっています。彼女の情熱と行動力が、今後の台湾の文化政策をさらに前進させていくことが期待されています。

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