台北機廠

台北機廠：台湾鉄道史を彩る国定古蹟

台北機廠（たいほくきしょう、英語: Taipei Railway Workshop）は、かつて台湾鉄路管理局（台鉄）に所属していた車両工場です。その歴史は古く、清朝時代にまで遡ります。1900年代初頭には、日本軍の軍事施設として利用された後、台湾総督府鉄道部によって鉄道工場へと転換されました。その後、輸送量の増加に伴い、現在の場所へ拡張移転し、1935年に本格稼働を開始しました。

沿革

当初、台北機廠は台北市信義区に位置し、初代の工場は現在の台北市大同区にありました。1930年代には、輸送需要の増大に対応するため、現在の地に移転。戦時中は、旧日本軍の拠点として使用され、1944年にはアメリカ軍の空襲を受けました。戦後、国民政府が接収し、現在の名称となりました。

台北機廠は、台鉄の電気機関車、電車、ディーゼル機関車、客車のメンテナンスを担う重要な役割を果たしていました。また、車両の改造や内装工事も行っていました。1997年にはCK101形蒸気機関車、2001年には廃車となったCK124形蒸気機関車を復元するなど、歴史的な車両の保存にも尽力しました。さらに、人材育成にも力を入れ、省立台北工業職業学校や国立成功大学などと共同で養成プログラムを設立しました。

施設

台北機廠の施設は、落成時の原型をほぼ留めており、建築様式だけでなく、作業員の生活や労働文化を偲ばせるものとして、台北市の市定古蹟に指定されています。特に、モダニズムの影響が見られる職員用大浴場は、直径5メートルの大型浴槽が設置され、工場操業用のボイラーの余熱を利用していました。施設内には、人事室、会計室、技術部、工作部など様々な部門がありました。

配線

台北機廠には、縦貫線の側線が引き込まれており、かつては職員通勤用の臨時駅「台北機廠前」が設けられていました。通勤時間帯には、専用の列車が運行されていました。2010年代には、汐科駅 - 板橋駅間の地下化区間で唯一の地上路線区間となり、台北駅方面への折返し線がありました。しかし、2012年には、台湾高速鉄道の南港駅延伸事業に伴い連絡線が撤去され、通勤列車の運行も終了しました。

バス停留所

かつては、市内バスの停留所として「鐵路機廠」という名称が使用されていました。その後、京華城の建設に伴い、停留所名が「京華城」に変更され、英語表記の相違も解消されました。

移転

台北機廠の移転は、台湾高速鉄道の延伸計画がきっかけとなりました。当初、移転先は台中市大肚区が候補に挙がりましたが、最終的には蘇澳新駅付近、潮州駅付近、富岡駅付近に機能が分割移転されることになりました。跡地は、当初は再開発が計画されていましたが、保存運動の高まりを受け、博物館としての活用が模索されることになりました。

保存運動

台北機廠の保存運動は、2011年頃から活発化しました。当初、大浴場のみが古蹟登録される予定でしたが、市民団体や専門家、さらには国際的な鉄道ファンからも全域保存を求める声が上がりました。中華民国鉄道文化協会は、旧高雄港駅をリニューアルした旧打狗駅故事館の成功例を挙げ、台北機廠の博物館化が観光面での大きなポテンシャルを持つことを訴えました。その結果、市当局は工場全体を古蹟リストに編入、有形文化財に登録しました。2015年には国定古蹟に指定され、博物館としての再生が決定しました。

鉄道博物館構想

現在、台北機廠は「台北機廠鉄道博物館園区」として、日本の鉄道博物館（さいたま市）やトヨタ産業技術記念館の協力を得ながら、再生計画が進められています。2016年には文化部、交通部、台鉄が修復や再活用案に合意し、2017年には一部が一般公開されました。また、日本の鉄道博物館から寄贈された国鉄583系[[電車]]が展示されるなど、国際的な連携も進んでいます。さらに、台湾各地で保存されていた車両も集められ、展示・修復作業が進められています。

舞台となった作品

台北機廠は、映画やミュージックビデオのロケ地としても利用されています。映画『天台』や『LUCY/ルーシー|LUCY_ルーシー』、人気バンドメイデイのMVなどで、その姿を見ることができます。しかし、一部の撮影では、文化財保護の観点から問題となる行為もあり、台鉄側が対応を迫られる場面もありました。

まとめ

台北機廠は、台湾の鉄道史を象徴する重要な文化遺産です。その歴史的価値と文化的意義から、国定古蹟に指定され、鉄道博物館としての再生が計画されています。博物館として生まれ変わることで、台湾の鉄道文化を後世に伝え、多くの人々に愛される施設となることが期待されます。

出典

中華民国文化部
臺北機廠鐵道博物館園區
TRW Railway Museum - YouTubeチャンネル
臺北機廠國家鐵道博物館園區工作手札公式ブログ
國家鐵道博物館籌備處 (NationalRailwayMuseumTW) - Facebook
臺北機廠 - 中華民国文化部文化資産局
 台湾鉄路管理局
臺北機廠遷建建設計畫 - 台湾鉄路管理局
反對台北機廠淪為北美二館 - 中華民国鉄道文化協会
反對臺北機廠成為美術館與文創園區，催生一座活的鐵道博物館！ (TPErailWorkshop) - Facebook
臺北鐵道文化節
台北機廠文史守護聯盟網站
鉄道の達人が教える台北鉄道の歴史の旅 - ディスカバー台北 2014年9-10月号
2014臺北機廠由來公民新聞

隣の駅

機廠支線（廃止）
華山駅（廃止） - 台北機廠
縦貫線北段（地下化後）
松山駅 - 台北機廠 - 台北駅

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