酈道元

酈道元（れきどうげん）

酈道元（生年不詳 - 527年）は、北魏の官僚・文人であり、地理書『水経注』の著者としてその名を知られています。字は善長といい、范陽郡涿県を本貫とします。

生涯

青州刺史であった酈範の子としてこの世に生を受けました。太和年間には、尚書主客郎という役職に就いていました。御史中尉の李彪にその才能を見出され、治書侍御史として召し上げられました。その後も順調に昇進を重ね、輔国将軍・東荊州刺史にまで上り詰めました。

東荊州刺史としては、その厳格な統治が災いし、少数民族から都に直訴される事態となり、免官となってしまいました。しかし、その能力は高く評価されており、長らく経た後、河南尹の代行として再び任用され、まもなく正式に河南尹となりました。

孝明帝の時代になると、沃野鎮、懐朔鎮などの北方の軍鎮を州に改め、その管轄下に郡・県・戍を設置する方針が打ち出されました。道元は、持節・兼黄門侍郎として、都督の李崇とともに新たな州県を設置し、定員を調整し、辺境の防備を再構築するという重要な任務を担うことになりました。しかし、六鎮の乱が発生したため、その使命を果たすことができず、洛陽へと帰還することとなりました。

525年（孝昌元年）には、徐州刺史の元法僧が彭城で反乱を起こし、南朝梁に援軍を要請するという事態が発生しました。道元は、持節・兼侍中・摂行台尚書として、諸軍を統率し、梁軍を攻撃する任を命じられました。渦陽での戦いで梁軍を破ると、追撃を行い、多くの戦果を挙げました。その功績により、安南将軍・御史中尉に任じられました。

御史中尉としては、厳格に法を適用し、多くの官僚を告発しました。汝南王元悦の寵童であった丘念を処刑しようとした際には、元悦が霊太后に訴え、丘念を釈放させました。これに対し、道元は元悦を弾劾したため、元悦は道元を恨み、放逐しようと画策しました。

527年（孝昌3年）10月、雍州刺史蕭宝寅の反乱計画を調査するという名目で、関右大使として関中に派遣されました。しかし、途中の陰盤駅亭において、蕭宝寅が派遣した郭子恢らに襲撃され、暗殺されました。

人物・評価

道元は学問を好み、珍しい書物をよく読んでいました。『水経』40巻や『本志』13篇に注釈を施し、また『七聘』などの文章を作り、当時広く読まれました。しかし、その性格を嫌う者も多く、同時代の評価は必ずしも高くはありませんでした。

伝記

『魏書』巻89 列伝第77
『北史』巻27 列伝第15

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