酒井忠篤 (庄内藩主)

酒井忠篤：戊辰戦争から華族への転身、そして西郷隆盛への敬慕

酒井忠篤は、江戸時代末期から明治・大正時代にかけて活躍した、華族であり陸軍軍人でもあった人物です。庄内藩主として、そして伯爵として、激動の時代を生き抜いた彼の生涯は、日本の近代史を理解する上で重要な一端を担っています。

庄内藩主としての激動の時代

嘉永6年（1853年）、酒井忠発の五男として生まれた忠篤は、若くして庄内藩11代藩主の座を継ぎました。しかし、その時代は幕末の動乱期。新徴組を預かり、江戸市中の取締り役を務めるなど、藩の重要な役割を担いました。戊辰戦争では奥羽越列藩同盟に属し、新政府軍と激しく戦いました。幾多の勝利を収めたものの、最終的には降伏。その後、改易され藩主の座を追われることとなります。しかし、弟の忠宝が家名再興を許され、庄内藩は存続しました。

軍人としての道、そして華族へ

改易後、忠篤は薩摩に赴き西郷隆盛に師事、兵部省に出仕し陸軍少佐に任官するなど、軍人としての道を歩み始めます。ドイツへの留学を経て陸軍中尉に昇進。その後、弟の忠宝が隠居したことにより、再び家督を相続し、伯爵に叙せられました。軍人としての道を歩みながら、政治の世界にも関わった忠篤でしたが、やがて政界から引退、陸軍も辞任し、晩年は鶴岡で過ごしました。

西郷隆盛への敬慕と『南洲翁遺訓』

忠篤は戊辰戦争後、西郷隆盛の思想に深く感銘を受け、旧庄内藩士らと共に薩摩を訪れ西郷に師事しました。これは、戊辰戦争における庄内藩への寛大な処置への感謝、そして西郷の理想に共鳴したからに他なりません。西郷の死後、旧藩士たちは西郷の教えをまとめ、『南洲翁遺訓』として出版。忠篤の西郷への敬慕は、この書籍にも如実に表れています。

家族と晩年

忠篤は、徳川慶頼の三女を正室に迎えました。数人の子女にも恵まれました。その中には、後に華族となった子もいます。大正4年（1915年）、63歳で生涯を閉じました。

酒井忠篤の生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の大名の物語として、そして西郷隆盛の思想を受け継いだ人物の物語として、後世に語り継がれるべきものです。

参考文献

庄内人名辞典刊行会編『新編庄内人名辞典』庄内人名辞典刊行会、1986年
西郷隆盛著、猪飼隆明翻訳、解説『新版 南洲翁遺訓 ビギナーズ 日本の思想』角川ソフィア文庫、2017年
* 霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 上巻』霞会館、1996年

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