酒井直次 (陸軍軍人)

酒井直次：暗号通信の権威、戦火に散った陸軍中将

酒井直次（さかい なおじ）は、明治24年（1891年）3月26日に生まれ、昭和17年（1942年）5月28日に戦死した日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将で、功二級を受章しています。彼は暗号通信の権威として知られ、陸軍通信学校長や第15師団長などの要職を歴任しました。

生い立ちと教育

酒井直次は、出羽国庄内藩初代藩主・酒井忠勝の血を引く家系に、酒井直興の次男として山形県西田川郡鶴岡五日町（現在の鶴岡市）に生まれました。幼少期を鶴岡で過ごした後、明治35年（1902年）に東京へ移住し、成城中学校に入学。その後、陸軍中央幼年学校に進み、本科を経て陸軍士官学校を卒業しました。

陸軍士官学校では、第23期生として清水規矩、桜井省三、小畑英良、根本博といった、後に陸軍を担う将官たちと同期でした。

軍歴

明治44年（1911年）に陸軍歩兵少尉に任官された酒井は、歩兵第29連隊に配属されました。大正9年（1920年）には陸軍大学校（32期）を卒業し、参謀本部付勤務、参謀本部員を経て、大正12年（1923年）にはサガレン州派遣軍参謀としてシベリア出兵に参加。その後も着実に昇進を重ね、昭和2年（1927年）には歩兵少佐に昇進し歩兵第2連隊付となります。

昭和4年（1929年）には、暗号研究のためポーランドへ出張。帰国後、参謀本部員、関東軍司令部付（特種情報班長）などを歴任し、満州にも赴任しました。昭和10年（1935年）には歩兵大佐に昇進し、陸軍通信学校教育部長に就任。その後、歩兵第4連隊長を経て、昭和13年（1938年）に陸軍少将に進み、歩兵第19旅団長を務めました。

昭和15年（1940年）には陸軍通信学校長に就任し、暗号通信の専門家としての手腕を発揮。昭和16年（1941年）には陸軍中将に進級し、第15師団長に親補され、中国戦線に復帰しました。

戦死

昭和17年（1942年）5月28日、浙江省蘭渓県で作戦中に乗馬が地雷を踏み、酒井は戦死しました。歴代の第15師団長の中で、戦死したのは彼が唯一です。その功績から、功二級金鵄勲章のほか、功三級金鵄勲章も受章しています。

人物像

酒井直次は、暗号通信の分野で卓越した知識と能力を発揮し、陸軍の通信技術の発展に大きく貢献しました。また、教育者としても優れており、多くの有能な通信兵を育成しました。戦場においては、常に率先して指揮を執り、部下からの信頼も厚かったと伝えられています。

家族

酒井直次の妻は貞子。陸軍中将・大村信行の娘です。長男の次武は陸軍大尉、後に陸上自衛隊の陸将となっています。

栄典

位階
正四位
勲章等
勲二等瑞宝章
功二級金鵄勲章
紀元二千六百年祝典記念章
外国勲章佩用允許
満洲帝国：満洲帝国皇帝訪日記念章

酒井直次は、激動の時代を駆け抜け、祖国のために尽力した軍人でした。彼の功績は、後世に語り継がれています。

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