釈迦 (映画)

映画『釈迦』について

1961年（昭和36年）11月1日に公開された『釈迦』は、大映が製作した総天然色の歴史大作映画です。日本初の70mmフィルムによる劇映画として、その映像美とスケールの大きさが話題となりました。監督は三隅研次、主演は市川雷蔵、勝新太郎、本郷功次郎という豪華キャストを迎え、仏教の開祖である釈迦の生涯を壮大なスケールで描いています。

ストーリー

紀元前5世紀のインドを舞台に、釈迦族の王子であるシッダ太子（後の釈迦）の誕生から、悟りを開いて仏陀となるまでを描いています。シッダ太子は、恵まれた環境の中で育ちますが、世の中の苦悩や身分差別に苦悩し、出家を決意します。

出家後のシッダは、厳しい修行を経て、様々な誘惑や困難に立ち向かいます。また、シッダの妻であるヤショダラーは、シッダの従兄弟であるダイバ・ダッタの邪な愛を受け、悲劇的な死を迎えます。しかし、シッダはそれらの苦難を乗り越え、ついに悟りを開き、仏陀となります。

仏陀となった釈迦は、多くの弟子たちを集め、その教えを広めていきます。一方、ダイバ・ダッタは釈迦への復讐心を燃やし、神通力を身につけてマガダ国を乗っ取ろうとします。しかし、釈迦の慈愛の力によって、ダイバ・ダッタは改心し、釈迦の教えは全国に広がっていくという物語です。

既知の伝承との違い

本作は、釈迦の生涯における一般的な伝承とは異なる部分があります。

シッダの母マーヤーは、シッダの生後7日で亡くなるという伝承がありますが、本作では存命しています。
シッダの妻であるヤショダラーは、ダイバ・ダッタに強姦され、その後自害するというオリジナルな設定です。
クナラ王子のエピソードは、釈迦の入滅後100年以上経ってから起きた出来事ですが、本作では釈迦の存命中の出来事として描かれています。

主要な登場人物

シッダ太子→釈迦： 本郷功次郎
釈迦族の王子で、後に仏陀となる。
ダイバ・ダッタ： 勝新太郎
シッダの従兄弟で、釈迦への復讐心を抱く。
ヤショダラー： チェリト・ソリス
シッダの妃。
アジャセ王子→アジャセ王： 川口浩
マガダ国の王子で、後に国王となる。
クナラ王子： 市川雷蔵
華子城の王子。釈迦の教えに触れる。

製作の背景

当時、テレビの普及により映画業界は苦境に立たされていました。大映社長の永田雅一は、この状況を打開するために、70mmフィルムという当時としては最先端の技術を用いた大作映画の製作を決定します。

しかし、撮影前にインドロケを予定していましたが、脚本の一部が仏教界から批判を浴び、海外ロケは中止となりました。特に、ヤショダラーがダイバ・ダッタに強姦されるという描写は大きな問題となりました。この問題は、国際問題に発展しかけましたが、最終的には大映側が修正に応じることで収束しました。

撮影について

本作の撮影には、当時の最先端技術である「スーパーテクニラマ70」が採用されました。また、京都府福知山市に広大なオープンセットを建設し、迫力のある映像を作り出しました。 特撮シーンも多く、アニメーション合成などの技術も駆使されています。

音楽

音楽を担当したのは、伊福部昭です。壮大なスケールで描かれる物語を、音楽でさらに盛り上げています。

受賞歴

本作は、その技術的な高さから多くの映画賞を受賞しました。特に、撮影、美術、録音、照明など、技術部門の賞を多く獲得しています。

まとめ

『釈迦』は、仏教の開祖である釈迦の生涯を、壮大なスケールで描いた歴史大作映画です。その映像美と豪華キャスト、そして仏教界からの批判という波乱万丈の製作秘話は、今もなお語り継がれています。また、当時としては珍しい特殊撮影やアニメーションを駆使した表現など、技術的にも高く評価されています。

公開当時、その内容から仏教関係者からの批判があったものの、興行的には大成功を収めました。この映画は、日本の映画史においても重要な作品の一つと言えるでしょう。

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