里井浮丘

里井浮丘（さとい ふきゅう）

里井浮丘は、寛政11年（1799年）に生まれ、慶応2年9月11日（1866年10月19日）に没した江戸時代後期の商人であり、国学者です。浮丘は号で、名は孝幹（たかもと）、通称は治右衛門、字は元礼といい、快園、跛鼈などの別号も持っていました。

生涯

和泉国日根郡（現在の大阪府泉佐野市）の旧家である里井家の、廻船問屋を営む里井治右衛門家（清順）の四男として生まれました。里井家は代々学問を重んじる家柄で、浮丘は幼い頃から書物に親しむ環境にありました。

長男の孝胤が分家し、次男と三男が早世したため、浮丘が家業を継ぎ、治右衛門を名乗ります。廻船業で財を成した里井家は、祖父の克孝が漢学を修め詩文に秀で、父もそれを引き継ぎ、豊富な蔵書を有していました。浮丘は13歳の時、兄と共に紀州の儒学者、内藤慎に師事して経史などの漢学を学び、書は京都の松本研斎に、絵も学びました。そのため、書画の鑑定に優れ、家業の傍ら、その財力で中国の書画をはじめとする多くの美術品を収集し、時には盛大な宴会を開き、秘蔵の書画を披露しました。その結果、岡田半江、小田海僊、貫名菘翁、日根対山、篠崎小竹など、多くの文人墨客と親交を深めました。

天保7年（1836年）には、38歳で友人である斎藤楽亭の紹介により、大国隆正に入門し、国学を学び始めます。これにより交友関係はさらに広がり、国学者や勤王の志士たちが里井家を訪れるようになりました。鈴木重胤のほか、藤本鉄石、梁川星巌ら尊攘派の人物とも交流がありました。

浮丘は漢詩文、和歌、随筆、日記など、多数の著作を残しました。『甘庶論』『日省録』などの著作のほか、『快園遺稿』には約500編の漢詩文が、『肢髄集』には1700首を超える和歌が収められています。

家業の廻船業のほか、砂糖の仲買も行い、土地も所有していました。また、里正（村長）も務めるなど、村の役人としても地域に貢献しました。安政4年（1857年）には59歳で家督を子息の孝準に譲り、万延元年（1860年）には村役も辞任し、慶応2年（1866年）に生涯を閉じました。



参考文献

『泉佐野市史』 清文堂出版、2005年
『里井浮丘遺稿抄』 泉佐野市教育委員会、1996年

関連項目

泉佐野市
高山保次郎

もう一度検索